酸素飽和度イメージング内視鏡検査により潰瘍性⼤腸炎の便意切迫感と重症度の評価が可能に
筑波大学は1月12日、潰瘍性⼤腸炎(UC)において、酸素飽和度イメージング内視鏡検査によって計測した⼤腸粘膜の酸素飽和度(StO2)が、症状の⼀つである便意切迫感および⼤腸炎の重症度を客観的に評価する新たな指標として有⽤であることを⾒いだしたと発表しました。
潰瘍性⼤腸炎(UC)は、大腸の粘膜に炎症が起こり、下痢、⾎便、そして便意切迫感などの症状が現れる炎症性腸疾患です。それらの症状に悩まされる患者さんが多く、治療における初期の目標は、そのような臨床症状をとることです。その後、⼤腸内視鏡検査を実施して、⼤腸粘膜の炎症が⼗分に改善されていることが最終的な目標となります。
しかし、患者さんのQOL(生活の質)を低下させている便意切迫感を客観的に評価する方法はこれまで存在していないこと、⼤腸内視鏡検査における⼤腸炎の重症度をスコアを⽤いた評価は、医師間でばらつきがあり、病状の客観的評価が難しくなることが問題になっています。
今回の研究では、潰瘍性⼤腸炎(UC)の炎症した⼤腸粘膜に⽣じる低酸素に着⽬し、潰瘍性⼤腸炎(UC)の患者さん100名に酸素飽和度イメージング内視鏡検査を実施して、490枚の静⽌画像を取得し、⼤腸の各部位(右側結腸、横⾏結腸、下⾏結腸、S状結腸、直腸)における腸粘膜のStO2を計測しました。なお、酸素飽和度イメージング内視鏡とは、⼤腸粘膜に特定の波⻑の照明光を当てて、⾎液中の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸収係数の差を検知することにより酸素飽和度(酸素の量)を測定することができる⼤腸の内視鏡です。
その結果、臨床症状、特に便意切迫感が強いほど、直腸粘膜のStO2が低くなることを発⾒しました。また、内視鏡や顕微鏡で評価した⼤腸炎の重症度が⾼いほど、⼤腸粘膜のStO2が低くなることを⾒いだしました。
以上の研究成果より、酸素飽和度イメージング内視鏡が、潰瘍性⼤腸炎(UC)の患者さんの便意切迫感を客観的に評価できる可能性のある新しい手法になると期待できるといいます。また、この評価法は、内視鏡の観察モードをStO2イメージに変更するだけで実施可能であり、潰瘍性⼤腸炎(UC)の診療を専⾨としない消化器内科医でも容易に潰瘍性⼤腸炎(UC)の重症度を客観的に評価できることから、評価者に依存しない、より均質な結果を取得できると考えられます。
筑波大学は、同⼀のUC患者において、炎症の程度に応じて、どのように腸粘膜のStO2が変化するのかを解析しく予定だそうです。⾎液検査や超⾳波検査などの既存のUC評価⽅法も参考にして、炎症の改善に伴いStO2が正常化するのかを明らかにすることで、「StO2正常化」という新しい治療⽬標を確⽴することができると考えられます。客観的な治療⽬標の設定により、UC患者さんの診療の向上や⽣活の質の改善につながると期待できます。