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遺伝性血管性浮腫(HAE)患者さんのQOL向上をめざして~CSLベーリングがメディアセミナーを開催~

CSLベーリング株式会社は12月5日に、CSL ベーリング 患者サポートプログラムメディアセミナー「遺伝性血管性浮腫(HAE)患者さんの QOL 向上をめざして」を開催。同セミナーに、広島市民病院病院長の秀道広先生とNPO法人HAEJ理事長の松山真樹子さんが登壇しました。

遺伝性血管性浮腫(HAE)は、急に皮膚や粘膜に浮腫が起こる遺伝性の疾患です。主に、顔、まぶた、唇、のど、お腹、足や手などが腫れます。のどが腫れると、呼吸困難や窒息を起こし、命にかかわることがあります。

浮腫は、時間が経つと消失するため、HAEは蕁麻疹の中の一つとして位置づけられていますが、発症の仕組みが異なります。HAEは、ブラジキニンという物質が血液の中でできることによって浮腫が起きます。

生まれてくる子供は50%の確率でHAEを発症

両親のどちらかがHAEの原因遺伝子変異を持つ場合、生まれた子供は50%の確率で、その遺伝子変異を引き継ぎます。生まれてすぐには発症せず、10代で発症する場合が多く、ほとんどの患者さんは20代までに症状が現れます。

秀道広先生

一方で、秀道広先生は「HAEの症状が出て、遺伝子の検査をおこなっても異常が出ない稀なケースもあります」と話しました。

長期予防治療で発作の頻度は減少

HAEの症状には個人差があり、先生と患者さんの間でうまくコミュニケーションが取れないと、診断に時間がかかる場合が多いです。

発作が出るきっかけは人それぞれですが、歯科治療や外科治療、怪我をした、どこかに体をぶつけた、疲れている、生理前、ストレスなど体に負担が起きた時に、発作が起きやすいといいます。発作時は、すぐに治療を行うことで治療薬の効果が高まります。

2021年に長期予防治療が開始され、患者さんのひと月あたりの治療薬使用量が減少しました。海外のデータでは、長期予防治療を行うことで、発作の頻度は減り、生活上の悩みや食事制限などは改善しましたが、恥ずかしさや鬱、不安傾向の項目には改善が見られなかったと報告されています。

発症から診断まで18年

NPO法人HAEJは、HAEの認知拡大や診断率の向上、治療の向上、患者さんのQOL(生活の質)の向上などを目的として、海外チームとも連携しながら様々な活動をおこなっています。

NPO法人HAEJ理事長の松山真樹子さんのご主人は、未診断のまま2010年にHAEの発作の一つである喉頭浮腫により亡くなりました。当時1歳だった娘さんも、ファミリーテストによりHAEと診断されています。

松山真樹子さん

松山さんは「夫は、17歳前後から手足の浮腫や、ひどい腹痛の症状があり、大学病院などに通っていましたが、HAEと診断されることは一度もありませんでした。手足の浮腫はアレルギーや虫刺され、腹痛は急性胃腸炎や腸捻転と診断されました。2010年、突然浮腫の発作が起き、窒息して倒れてしまったため、すぐに救急車を呼び、病院へ搬送されました。しかし、喉の腫れがひどく、切開手術をおこないましたが、その後、亡くなりました。亡くなった後、先生が症状について調べてくださり、HAEと診断されました」とご主人のHAE発症から診断までの経過を話しました。

現在は、自宅での治療が可能に

以前は、HAEの疾患認知率が低く、病院にかかっても、別の病気だと診断される患者さんが多くいました。また、診断がついても、発作が出てから病院へ行くことしかできませんでしたが、現在は予防薬もあり、自宅で皮下注射が可能となりました。

松山さんは「理想は、予防しておけば発作が出ないこと、予防薬・発作時の薬ともに効果が高いこと。また、副作用が辛いと、仕事や学校に影響が出てしまうので、身体的な負担が少なくなると嬉しいです」と今後の治療への期待を寄せました。

参考
CSLベーリング株式会社 プレスリリース

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