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日本独自の診断基準「心臓サルコイドーシス臨床診断群」を組織診断群と比較、同等の有害事象を確認

国立循環器病研究センターは7月21日、心臓サルコイドーシス患者さんのうち、日本独自の診断基準である臨床診断群の患者さんを、組織学的に診断された心臓サルコイドーシス患者さんと比較し、死亡、心不全入院、不整脈イベントが同等に不良であることを報告し、臨床診断群を診断することの重要性を報告したと発表しました。

この研究は、同センター心臓血管内科の北井豪医師、泉知里医師らの研究チームによるもの。成果は、学術誌「Heart」に7月6日付で掲載されました。

サルコイドーシスは、原因不明の炎症を起こす多臓器疾患。炎症を起こしている組織に肉芽腫と呼ばれる塊が見られるという特徴があります。サルコイドーシスと診断するための医療ガイドラインは、欧米と日本では異なります。欧米では、心臓もしくは他臓器から特徴的な肉芽種などの組織学的な所見を確認することが必須とされていますが、日本では、組織診断で診断不可能な患者さんにおいても、画像所見や臨床所見で一定のクライテリアの基準を満たせば、サルコイドーシスと診断できる「臨床診断群」というカテゴリーを設定しています。

しかし、この臨床診断群が従来の組織診断群と比較してどのような予後であるかに関しては、十分な検討がなされていませんでした。そこで今回、全国33施設が協力したレジストリー研究「Illuminate-CS」のデータを用いて、欧米のガイドラインでの診断基準で診断される組織診断群(biopsy-proven CS)と、本邦の基準でのみ診断される臨床診断群(clinical CS)の予後を比較検討したそうです。

Illuminate-CSレジストリに登録された512例のうち、314例(61.3%)が組織診断群、198例(38.7%)が臨床診断群でした。追跡期間中に両群で観察された有害事象を比較したところ、臨床診断群も組織診断群と同等に有害事象が発生していることを確認(臨床診断群vs 組織診断群,調整ハザード比:1.24,95%信頼区間:0.88-1.75,p=0.22)。また、心臓のみに所見を認める心臓限局性サルコイドーシスに限った解析においても、臨床診断群は組織診断群と同等に有害事象が発生していることが確認されたといいます(心臓限局性臨床診断群vs心臓限局性組織診断群,調整ハザード比:1.23,95%信頼区間:0.56-2.70,p=0.61)。

画像はリリースより

今回の研究により、欧米の診断基準では心臓サルコイドーシスと診断されない患者さんが相当数いる可能性が示唆され、またその臨床診断群も組織診断群と同等に予後不良であることが報告されました。研究チームはプレスリリースにて、「本邦のガイドラインで推奨されている、臨床診断群のカテゴリーの重要性が示されたと考えており、この結果を元に欧米のガイドラインでも臨床診断群が追記されることが期待されます」と述べています。

出典
国立循環器病研究センター プレスリリース

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