嚢胞性線維症における炎症応答調節の破綻、抗炎症タンパク質のmRNA連結異常が関与か
熊本大学は7月21日、遺伝性肺疾患のひとつである嚢胞性線維症の過剰炎症の原因として、抗炎症機能を持つ膜タンパク質SIGIRR遺伝子の連結異常がウイルス感染時の炎症調節の破綻を引き起こし、過剰炎症の原因の一端を担うこと明らかにしたと発表しました。
この研究成果は、同大大学院生命科学研究部(薬学系)の首藤剛准教授、崇城大学薬学部の首藤恵子講師ら研究チームによるもので、科学誌「International Journal of Molecular Sciences」に7月13日付で公開されました。
欧米では最も患者数の多い遺伝性肺疾患である囊胞性線維症(CF)は、慢性気道炎症や過剰な粘液貯留、これらの症状に伴う気道閉塞が起こり、若年で呼吸機能不全により死に至る難治性の遺伝性肺疾患。CF患者さんでは、ウイルス感染などをきっかけに過剰な炎症応答が起きることで、病態が悪化することが問題となりますが、その詳細な機序は不明でした。
今回、研究チームは、CF患者さん由来の肺細胞で、抗炎症機能を持つSIGIRRという膜タンパク質の合成に異常が起こり、D8-SIGIRRという異常なSIGIRRタンパク質となることを発見。また、異常SIGIRR(Δ8-SIGIRR)は、遺伝子合成時の連結異常(mRNAスプライシング異常)により生じることも明らかになりました。これらの結果として、CFでのウイルス感染に対する過剰炎症応答が、D8-SIGIRRの生成による抗炎症機能の喪失に伴うことを解明し、CFの新たな治療薬の標的として、SIGIRR mRNAのスプライススイッチを提起しました。
首藤准教授らは、これまでにmCF特異的なmRNAスプライシング異常が亜鉛輸送トランスポーターZip2のmRNAの連結調節に影響し、粘液産生異常を引き起こすことも明らかにしていました。今回の研究は、この成果と合わせて考えることで、CFの病態の根本的な理解につながる研究成果としています。