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のうほうせいせんいしょう
嚢胞性線維症cystic fibrosis

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嚢胞性線維症
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病気・治療解説

概要

全身の粘膜の塩化物イオン(用語解説参照)の輸送能力が遺伝的に弱いため、生まれて間もない頃から、気管支、消化管、膵管(用語解説参照)などが粘り気の強い分泌液で詰まりやすくなり多様な症状を表す病気です(図)。ほぼ全ての患者さんが。肺炎や気管支炎を繰り返します。細い気管支に粘り気の強い痰が溜まり、細菌が感染しやすく、感染すると治りにくいため、 炎症 が続いて徐々に肺の組織が壊れていきます。多くの患者さんでは、膵臓から消化 酵素 が分泌されなくなり消化不良になります。粘り気の強い分泌液で膵管(用語解説参照)が詰まり、膵臓が働けなくなって小さくなるからです。また、汗に含まれる塩化ナトリウムの濃度が高くなるのが特徴で、汗試験はこの病気を診断するために最も重要な検査です。

罹患数

2018年5月現在で、登録制度事務局(名古屋大学健康栄養医学研究室)では、全国の40人の患者さんを把握しています。日本では、出生約60万人に1人という稀な病気です。現在把握されている患者さんは重症の患者さんが多いので、診断されていない軽症の患者さんがもっと多くいる可能性があります。

この病気はアジアでは稀ですが、ヨーロッパ人種では出生約3,000人に1人が発症する頻度の高い病気です。日本でも国際結婚で生まれた子供さんでは頻度が高いと予想されます。

疫学

ほとんどの患者さんでは、新生児期~乳幼児期に発病します。男女の差はありません。膵臓に病気を起こさない比較的病状が軽い患者さんの場合は、小学生~中学生の頃に気管支炎や肺炎を繰り返すようになって発病することもあります。

原因

第 7染色体上に存在するCFTRという遺伝子の変異(用語解説参照)が原因です。この遺伝子の情報をもとに作られるCFTRタンパクは、細胞膜(細胞の中と外を隔てる膜)に組み込まれて塩化物イオンの通り道(チャネル)として働いています。CFTR遺伝子の 変異 には多くの種類があり、CFTRタンパクが、作られなかったり、細胞膜に組み込まれなかったり、塩化物イオンが通れないといった問題が発生します。そのため、気管支や消化管の粘膜を覆う分泌液の成分バランスが崩れて粘り気が強すぎる状態になり、この病気を起こします。CFTRタンパクは、全身の臓器の粘膜細胞で働くため多様な症状を表します(図)。

遺伝

私達は両親から1つずつ遺伝子を受け継ぎます。この病気は両方のCFTR遺伝子に病的な変異がある場合のみに発病しますので、劣性遺伝することになります。一方の遺伝子のみに変異がある 保因者 ( キャリア )は、発病しません。両親がともに保因者である場合、その子供が病気になる確率は25%。保因者になる確率は50%、健常である確率は25%です。日本の患者さんの中で、家族歴のある(血縁にこの病気の患者さんがいる)患者さんは30%ほどです。

症状

粘り気の強い腸液のために、生後数日経過しても胎便(生まれて最初に出る便)が出ないため、腸閉塞(イレウス)になり、腹部の膨満と嘔吐を引き起こします。胎便性イレウス(あるいは、メコニウムイレウス)と呼ばれ、30~40%ほどの患者さんに起こります。

約80%の患者さんでは、膵臓から消化酵素が分泌されなくなり消化不良、下痢になります。離乳期からの大量頻回の悪臭を伴う 脂肪便 が特徴的で、脂肪便は約30%の患者さんに見られます。消化不良により、栄養不良、やせ、成長不良になります。

ほとんどの患者さんが、気管支炎や肺炎を繰り返します。痰のからむ咳が続き、細菌が感染すると膿のような痰が出ることがあります。また、ほとんどの患者さんで副鼻腔炎が見られます。

その他、約20%の患者さんに肝障害~肝硬変が起こります。また、男性の患者さんのほとんどが男性不妊になります。

治療法

腸閉塞(胎便性イレウス)を起こした場合には、まず、粘り気の強い胎便を溶かす浣腸が行われますが、改善しない場合は手術が必要となります。

消化不良が見られる場合には、充分な量の消化酵素剤を服用する必要があります。2011年に高力価の消化酵素製剤が国内で使えるようになり、今までのように大量の薬を服用する必要はなくなりました。消化不良があると、栄養不良になり発育が悪くなるだけでなく、感染に対する抵抗力が落ちます。また、やせが進むと肺機能が悪くなることが知られていますので、充分な量の消化酵素剤を服用しながら、充分な栄養を摂り、標準的な体格を目指します。

粘り気の強い痰の排出を促し、気管支と肺の細菌感染を抗生物質を用いて適切に治療し、肺機能の悪化を防ぐことが最も重要です。特に、緑膿菌という細菌の感染が長く続くと。抗生物質が効きにくくなり肺機能が悪化しやすいことが分かっています。2012年に、粘り気の強い痰を分解して排出し易くする吸入薬と、緑膿菌の感染増悪に対して有効な抗生物質の吸入薬が、国内で使えるようになりました。他には、高張食塩水の吸入が、痰の排出に有効です。これらの吸入治療に、体位ドレナージ、叩打法、振動、咳の補助などの肺理学療法を併行して行うことが勧められます。

経過

腸閉塞(胎便性イレウス)は、生後まもなく起こります(患者さんの30~40%)。
膵臓に問題が起こる患者さんでは、生まれる前から少しずつ膵臓に変化が起きています。2歳頃には、膵臓から充分な消化酵素が分泌されなくなり、消化酵素製剤の服用が必要になります。

肺炎や気管支炎を繰り返すと、徐々に肺の組織が壊れていき、呼吸不全となります。24年前にこの病気の調査が始まった頃は、20%以上の患者さんが5歳未満で亡くなっていましたが、感染症の治療と栄養管理の進歩によって 予後 が改善しています。2011年以降、この病気の基本的な薬が国内で使えるようになったので、さらに改善が期待できます。

患者さんに知って欲しいこと

学校の先生の理解と協力が必要です。吸入して痰を出すために時間がかかり、食事も時間をかけて十分食べる必要がありますので、登校時間に間に合わないなどの問題が起こります。

病院の栄養士と薬剤師に、食事・栄養の摂り方や消化酵素剤の服用のタイミングなどについて具体的な指導を受ける必要があります。通常の食事だけで栄養が足りない場合は、おやつを利用して、また、色々な液体食、中鎖脂肪酸食品などを利用して栄養を摂るようにします。脂溶性ビタミンが足りていない場合には、脂溶性ビタミンを豊富に含む食材を摂ることが勧められます。

気管支と肺の細菌感染を予防するために、手洗いを心掛ける、咳をしている人に近づかない、吸入用のネブライザーを清潔に保つ、インフルエンザの予防接種を受けることが勧められます。

出来る範囲で運動をすることが大切です。運動は、肺機能を改善させ、骨を強くします。

※難病情報センターhttp://www.nanbyou.or.jpより、許可をいただき掲載しております。