エイコサペンタエン酸の摂取で形質細胞の分化が抑制、全身性エリテマトーデス(SLE)病態の改善をモデルマウスで確認
名古屋大学は6月16日、魚油の主成分であるエイコサペンタエン酸(EPA)の経口摂取が自己免疫疾患のひとつである全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスの病態を改善することを明らかにしたと発表しました。
この研究成果は、同大環境医学研究所分子代謝医学分野/大学院医学系研究科免疫代謝学の菅波孝祥教授、伊藤綾香助教、小林アズサ大学院生を中心とする研究グループと、同大医学系研究科腎臓内科学などと連携によるもので、国際科学誌「Frontiers in Immunology」に6月15日付で掲載されました。
自己免疫疾患は、自己に対して免疫系が過剰に反応することによって発症します。その多くは難病に指定されています。自己免疫疾患のひとつであるSLEは、国内の推定患者数が6〜10万人に上ります。しかし、根治療法は確立されておらず、病態の発症や促進のメカニズムの全容はいまだ不明です。
今回、研究グループは、異なる病因によって発症する2種類のSLEモデルマウスを用いて、オメガ3多価不飽和脂肪酸であるEPAの経口摂取によって、自己抗体産生や腎糸球体への免疫複合体沈着が抑制され、SLE病態を改善することを突き止めました。また、そのメカニズムとして、体液性免疫反応の重要なB細胞から抗体産生細胞である形質細胞への分化が抑制されることも明らかにしました。
研究グループはプレスリリースにて、「EPAは魚油の主成分であり、日常の食生活に取り入れられること、また高脂血症治療薬として臨床応用されており、安全性が確認されていることから、EPAの摂取はSLEにおける新たな予防法、治療法として有用であると考えられます」と述べています。