ANCA関連血管炎に対するリツキシマブによるB細胞除去療法+少量ステロイド療法、既存療法と同等の治療効果並びに少ない副作用を示す
千葉大学は6月2日、指定難病である顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症の新たな治療法を開発したと発表しました。
これは同大医学部附属病院アレルギー・膠原病内科の古田俊介特任講師、同大大学院医学研究院アレルギー・臨床免疫学の中島裕史教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国医師会が発行する専門誌「The Journal of the American Medical Association (JAMA)」に6月1日付で公開されました。
厚生労働省の定める指定難病である顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症は、免疫の異常によって全身の毛細血管や小動脈に炎症をおこす自己免疫疾患。これらの疾患では、抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性になることから、ANCA関連血管炎とも呼ばれ、国内では合わせて約12,000人の患者さんがいると考えられています。
無治療の場合、呼吸不全や腎不全に至る可能性がありますが、現在は大量副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤の併用治療で80%程度の患者さんが寛解を達成できるようになっています。その一方で、大量の副腎皮質ステロイド投与に関連して起こる感染症や骨粗鬆症、脂質・糖代謝異常など、副作用の問題があります。
自己免疫疾患のなかでもANCA関連血管炎は、抗体の産生源であるB細胞の関与が強い病気だと知られていました。近年、自己免疫疾患に対するリツキシマブによるB細胞除去療法の臨床応用が進んでおり、研究チームは、ANCA関連血管炎もリツキシマブを用いたB細胞除去療法によって副腎皮質ステロイドの使用量を抑え、副作用の少ない治療を実現できると考えたそうです。
本臨床研究は、全国 20 箇所の病院にて新規にANCA関連血管炎を発症した患者さん140 人を対象に、①少量副腎皮質ステロイド+リツキシマブで治療する群、②従来通りの大量副腎皮質ステロイド+リツキシマブで治療する群に1:1でランダム化割り付けて実施されました。なお、治療の効果はBVASという指標を用いて評価しました。
①の少量副腎皮質ステロイド群では、副腎皮質ステロイドの投与量をプレドニゾロン換算で体重1kg あたり0.5mg/日から治療を開始し、その後急速に減量し5ヶ月後には投与を完全に中止しました。②の大量副腎皮質ステロイド群では、体重1kgあたり1.0mg/日から治療を開始後、徐々に減量しながら、5ヶ月後以降は10mg/日で維持しました。
半年間の副腎皮質ステロイドの総使用量は、①の少量副腎皮質ステロイド群で中央値 1,318mgだったのに対し、②の大量副腎皮質ステロイド群は中央値4,151mg。治療開始後は両群ともBVASスコアが減少し疾患活動性が低下し、半年後に寛解(BVASスコア=0)を達成した割合は、①の少量副腎皮質ステロイド群で71%、②の大量副腎皮質ステロイド群で69%と、治療の有効性は両群で同等でした。
一方で重篤な副作用は、②の大量副腎皮質ステロイド群では36.9%の患者さんに認められたのに対し、①の少量副腎皮質ステロイド群では18.8%と著明に低下。また、副作用の中でも、重篤な感染症については②の大量副腎皮質ステロイド群で20.0%の患者さんに認められたのに対し、①の少量副腎皮質ステロイド群では7.2%と特に大きく低下したそうです。
これらの結果からANCA関連血管炎の治療にリツキシマブを用いたB細胞除去療法を併用することで、治療法の効果を維持しながら副腎皮質ステロイドの使用量を従来の 1/3 程度に抑えられること、従来の治療法と比べて重篤な副作用の発生頻度を減らせることが明らかになりました。研究グループはプレスリリースにて「実際の診療でもこの新しい治療法が普及していくことが期待されます」と述べています。
出典元
千葉大学 プレスリリース