1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. 重症筋無力症の予後予測に抗アセチルコリン受容体抗体価減少率が有用か

重症筋無力症の予後予測に抗アセチルコリン受容体抗体価減少率が有用か

千葉大学は5月11日、指定難病である重症筋無力症について、治療後早期に抗アセチルコリン受容体抗体価減少率を調べることによって、予後を予測できることを明らかにしたと発表しました。

この研究は同大大学院医学研究院脳神経内科学の桑原聡教授らの研究グループによるもので、科学雑誌「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」に5月7日付でオンライン掲載されました。

重症筋無力症は、抗アセチルコリン受容体抗体などの病原性自己抗体によって神経と筋肉の接合部に異常をきたし、筋力低下を起こす自己免疫疾患です。厚生労働省の定める指定難病のひとつであり、国内の患者数は約2万9000人とされています。

重症筋無力症は、ステロイドなど免疫治療の発展により予後が著しく改善されてきました。しかし、長期的に完全寛解に達するのは日本の重症筋無力症の患者さんの10%以下であり、多くの場合、ステロイドの長期内服が必要になります。

ステロイド長期内服はさまざまな副作用をもたらし、生活の質(QOL)を低下させます。重症筋無力症では、予後の予測やステロイドをはじめとする治療法の選択に有用で、臨床現場で使える指標は乏しいのが現状だったといいます。

抗アセチルコリン受容体抗体価の減少率が高い人ほど1年後の予後が良好

重症筋無力症では血清のおよそ85%で抗アセチルコリン受容体抗体が検出され、診断や治療経過のモニタリングを目的として、抗アセチルコリン受容体抗体価が測定されます。今回の研究では、重症筋無力症患者さん53人の治療前後の抗アセチルコリン受容体抗体価の比較から算出した抗体価減少率で、予後が予測できるかを検討。予後の指標は、重症筋無力症の一般的な治療目標である軽微症状(MM)の達成率としました。

その結果、抗アセチルコリン受容体抗体減少率が0.64%/日より高い群では、低い群と比較して治療開始1年後のMM達成率が有意に高く、より早期にMMを達成していることが判明。対象となった患者さんの92%がステロイドによる治療を受けており、抗アセチルコリン受容体抗体価の減少率が高い人ほど治療1年後の予後が良好で、ステロイド内服量も少ないことも分かったそうです。

この結果から、抗アセチルコリン受容体抗体価の減少率は、ステロイド治療への反応性を反映しており、重症筋無力症の治療予後を予測する有用なマーカーとなりうると考えられるといいます。

臨床現場で日常的に測定できる抗アセチルコリン受容体抗体価の減少率から予後や治療反応性を予測することができれば、ステロイドの用量調整がしやすくなり、免疫抑制剤などステロイド以外の治療を併用する判断がしやすくなることが期待されます。研究グループはプレスリリースにて、「この新規指標を用いた治療法の最適化により重症筋無力症患者さんの予後や生活の質の改善が期待できます」と述べています。

出典元
千葉大学 ニュース・イベント情報

関連記事