テロメア長の測定、遺伝性骨髄不全症の診断に有用か
名古屋大学大学院医学系研究科・医学部医学科は5月7日、小児骨髄不全症患者さんを対象に次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析とテロメア長の測定を行い、テロメア長の測定が遺伝性骨髄不全症の診断に有用であると発表しました。
この研究は、同大学院医学研究科小児科学の高橋義行教授ら研究グループによるもので、ヨーロッパ血液学会が発行する科学誌「Haematologica」電子版に4月22日付で掲載されました。
骨髄不全症は、骨髄の中で血液が作られなくなる疾患です。生まれつき遺伝子に異常のある遺伝性骨髄不全症(IBMFS)と、自己免疫に関連した原因で起こる後天性再生不良性貧血(AA)があります。
骨髄不全症を治療する際、IBMFSと後天性AAは治療法が異なるため、両者を区別することが重要です。しかし、IBMFSの臨床症状はさまざまで、特徴的な症状がみられない場合、診断が困難になることもあります。
IBMFSのひとつである遺伝性角化不全症(DC)は、テロメアに関連する遺伝子の異常が原因であり、テロメア長の著明な短縮が特徴です。一方、DC以外のIBMFSや後天性AAにおいても、テロメア長の短い症例が報告されています。
IBMFS をより確実に診断できる可能性
今回、研究グループは133例の骨髄不全症の患者さんを対象に、次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を実施。その結果、IBMFSでは後天性AAよりもテロメア長が有意に短縮していることが示されました。
また、統計学的解析によってIBMFSの診断に有用な基準値を算出。この基準を用いたところ、DCの91%、DC以外のIBMFSの60%でテロメア長が基準値よりも短縮していることが示されたといいます。
今回の研究によって、骨髄不全症患者さんのテロメア長を測定することで、DCの診断のみでなく、DC以外のIBMFSのスクリーニング検査としての役割も果たせる可能性が示唆されました。研究グループはプレスリリースにて、「テロメア長の短い骨髄不全症の患者に対して次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を行うことで、IBMFS をより確実に診断することができる可能性があります」と述べています。