水頭症の発症に関わる遺伝子を同定
九州大学を中心とする研究グループは水頭症の発症要因について、Tsukushi遺伝子が関与していることを世界で初めてマウスを用いた実験から報告しました。Tsukushi遺伝子は、ニワトリ初期杯の発現パターンが土筆に似ていることから当研究グループにより命名されました。
脳の中はの脳脊髄液が循環していますが、水頭症では脳室が拡大し脳脊髄液が停滞して頭蓋骨内の圧力が高まる難病です。特に特発性正常圧水頭症は歩行障害や尿失禁、精神症状などがみられ、国内の患者数増加が懸念されていることから治療法の早期開発が待たれています。
Tsukushi遺伝子を欠損したマウスは正常なマウスと比較して脳が小さく水頭症に似た症状が出ることが知られています。また、Tsukushi遺伝子欠損マウスを行動解析すると歩行困難や不安様行動が見られました。そこで、出生直後のTsukushi遺伝子欠損マウスの脳室にTsukushiタンパク質を投与したところ脳室の拡大が抑制されました。Tsukushi遺伝子の変異を再現したマウスを人工的に作出した結果、このマウスでは脳室拡大が観察されました。これらのことから水頭症の発症とTsukushi遺伝子の発症メカニズム関連が示唆されました。今後はTsukushi遺伝子に着目した病態解明と治療法開発が期待されます。
出典元
熊本大学 プレスリリース