パーキンソン病原因遺伝子産物と細胞死に関わるミトコンドリア酵素の働きを解明
学習院大学をはじめとする研究グループは、パーキンソン病の原因遺伝子産物であるParkinが細胞死抑制タンパク質の分解を促進し、細胞死を引き起こす仕組みを見出しました。さらに、一方でミトコンドリアに存在する酵素MITOLがParkinを分解して細胞死を抑えていることも明らかになりました。
ミトコンドリアは細胞の中にある細胞小器官であり、エネルギー産生を行うほかに細胞死を調節する働きも知られています。また、ミトコンドリアの機能低下はパーキンソン病やアルツハイマー病といった神経変性疾患に繋がることも知られており、機能が低下したミトコンドリアの排除による正常な神経細胞の保護機能が注目されています。機能低下したミトコンドリアを選択的に排除する仕組みはマイトファジーと呼ばれ、2008年にはパーキンソン病原因遺伝子産物Parkinがマイトファジーに関連することが報告されました。一方で、近年はParkinによる細胞死誘導も報告されており、本研究グループはどのように細胞死にParkinが関与しているのかを調査しました。
本研究グループは過去の研究において、ミトコンドリアの外膜にある酵素MITOL(Mitochondrial Ubiquitin Ligase)を同定しました。MITOLは細胞毒性を持つタンパク質に対し目印をつけ分解を促進し、ミトコンドリアの品質を保っています。本研究においてマイトファジーの誘導時にParkinとMITOLが特異的に観察され、MITOLがマイトファジーに反応してParkinに分解の目印を付加していることが明らかになりました。さらに、MITOLを持たない細胞を用いてマイトファジーを誘導したところ、Parkinが過剰に蓄積し細胞死が亢進されました。さらに細胞死抑制タンパク質FKBP38の減少に着目しParkinとFKBP38の関係性を調べたところ、MITOLが無い場合にはParkinがFKBP38を分解し細胞死が誘導され、MITOLが有る場合にはParkinが分解されFKBP38が保護されていました。本研究によりミトコンドリア酵素MITOLがParkinの分解を促進し細胞死を抑制しているメカニズムが明らかになり、特に孤発性のパーキンソン病における新たな治療戦略の開発にも期待が高まっています。