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ヒトiPS細胞を用いて結膜上皮を作成する方法を確立

大阪大学をはじめとする研究グループはヒトiPS細胞から眼の結膜上皮細胞を誘導する方法を確立したと発表しました。これまでヒトiPS細胞より角膜上皮の作成はできていましたが結膜上皮の作製は困難でした今回の技術を用いて眼疾患領域における創薬研究の加速が期待されています。

眼の表面は主として結膜上皮と角膜上皮から構成されます。結膜上皮は涙液中にMUC5ACなどのムチンを分泌して眼表面を保護していますが、疾患の影響や炎症などでムチンの分泌が低下することでその機能が低下するとドライアイなどにも繋がります。これまでにヒトの結膜上皮の入手が困難であることや、結膜細胞の培養法は確立されていないことから結膜上皮は角膜上皮に比べて研究が進んでいませんでした。研究グループは過去の研究よりヒトiPS細胞から多帯状コロニー(SEAM)の誘導法を確立し角膜上皮を作製しました。結膜上皮には上皮成長因子(EGF)が、角膜上皮にはラチノサイト成長因子(KGF)が、上皮の表現型維持や増殖に関与していることが知られていることから、これらの2因子を使い分けることでSEAMから結膜細胞の誘導を試みました。

研究グループはSEAMにEGFまたはKGFを添加し、それぞれの変化を確認しました。その結果、分化誘導開始6週後時点に両グループで角結膜上皮の原基が認められました。さらに分化誘導開始10週後時点ではKGF添加グループで角膜上皮が誘導された一方で、EGF添加グループで角膜上皮への誘導が抑えられていました。また、ヒトiPS細胞由来の結膜上皮シートはMUC5ACを分泌していることも明らかになり、結膜のマーカーやムチンの染色でも正常な結膜上皮と同様の特徴がみられました。本研究によりSEAMから結膜上皮細胞の誘導法が確立されました。これまでに入手が困難だった結膜細胞をiPS細胞から誘導可能になったことで研究ツールへの応用もできます。ドライアイをはじめとする眼疾患に対する創薬研究の加速にも繋がると期待されています。

出典元
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 プレスリリース

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