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神経変性疾患患者さんの末梢血白血球におけるミトコンドリア呼吸鎖超複合体形成が疾患の進行と相関

東邦大学の研究グループと東邦大学医療センター佐倉病院は5月16日、神経変性疾患であるアルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症患者の末梢血白血球において、エネルギー産生酵素であるミトコンドリア呼吸鎖超複合体形成が疾患の進行と相関することを発見したと発表しました。

神経変性疾患は、中枢神経におけるミトコンドリア機能異常が発症の原因と言われている疾患です。神経変性疾患の中には、アルツハイマー病やパーキンソン病(指定難病6)、筋萎縮性側索硬化症(指定難病2)などがあります。

神経変性疾患による運動機能や認知機能の障害は、病変部の神経細胞脱落が進行してから現れるため(病理・ドパミン画像での検討では黒質ドパミン神経細胞脱落が30%以下)、早期診断法の開発が求められています。また、神経変性疾患は中枢だけでなく末梢でも疾患関連タンパク質の蓄積や呼吸鎖複合体の活性低下などが報告されています。一方、神経変性疾患患者さんの末梢血におけるミトコンドリア呼吸鎖超複合体形成が疾患の進行に伴い変化するのかは、明らかになっていませんでした。

今回、研究グループは、検出感度を約3倍向上させて改良したミトコンドリア呼吸鎖複合体Iを標的としたゲル内活性検出法とBN-PAGEの改良型電気泳動法であるhigh resolution Clear Native-PAGE(hrCN-PAGE)を用いて、神経変性疾患患者の末梢血白血球ミトコンドリアの呼吸鎖超複合体形成を解析しました。

その結果、アルツハイマー病患者さんとパーキンソン病患者さんでは、健常者と比べて構成要素の多い「大きな」呼吸鎖超複合体割合が多く、レビー小体型認知症患者さんでは少ないことがわかりました。運動機能障害の分類であるHoehn & Yahr scaleを疾患の進行度とし、採血時の疾患の進行度と各呼吸鎖超複合体の割合を比較すると、パーキンソン病とレビー小体型認知症において、疾患の進行に伴い「大きな」呼吸鎖超複合体割合が低下しました。

以上の研究成果について研究グループは、神経変性疾患の症状が現れる以前は、異常な疾患関連タンパク質による呼吸鎖複合体への障害により発生する活性酸素種と、呼吸鎖複合体活性の低下に対し、呼吸鎖超複合体形成を促進するという恒常性の維持機構が働いているのではないかと考察。また、その許容限界を超えて呼吸鎖超複合体の形成能が低下すると、細胞死が誘導されるようになり、病態の進行に伴って呼吸鎖超複合体の形成能がより一層低下していくという恒常性の破綻機構に状態が移行し、その長年の蓄積により神経変性疾患の症状が現れるのではないかとしています。

東邦大学は今後の展望について、「神経変性疾患は認知機能や運動機能障害が出現する以前から、末梢でも変化が見られていることが報告されています。本研究では、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体型認知症患者の末梢血白血球におけるミトコンドリア呼吸鎖超複合体の割合の低下が疾患の進行度と相関することを発見しました。本研究により血液検査で神経変性疾患を早期に診断できるようなバイオマーカーの開発が加速することが期待されます」と述べています。

なお、同研究の成果は、「The Journal of Biochemistry」オンライン版に2023年11月29日付で掲載されました。

出典
東邦大学 プレスリリース

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