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全身性強皮症を引き起こす遺伝子の解明

筑波大学をはじめとする研究グループは全身性強皮症 (指定難病 51) の発症に関連する遺伝子多型を初めて発見したと発表しました。転写因子であるFLI1遺伝子上の特定の領域における塩基配列の繰り返し回数が、強皮症の遺伝的な発症原因の一要因である可能性が示唆されました。

全身性強皮症の発症に関わる遺伝子の特定の塩基配列

全身性強皮症は膠原病に分類される疾患の1つで、皮膚をはじめ全身の臓器が徐々に線維化し硬くなっていく疾患です。発症メカニズムはまだ解明されていませんが、複数の遺伝的要因が組み合わさることで発症する疾患 (他因子疾患) と考えられています。過去の研究より全身性強皮症の発症に関わる遺伝子がいくつか同定されてきましたが、他の免疫疾患にも関わる遺伝子と同様のもので、強皮症を特徴づけるような原因遺伝子の特定には至っていませんでした。一方で、Fli1と呼ばれる転写因子の発現を低下させたマウスでは血管障害や線維化などの強皮症様の症状があらわれることが知られています。Fli1は転写因子と呼ばれ、遺伝子の発現を制御するためのタンパク質として働きます。Fli1遺伝子の情報をコードするFLI1遺伝子の一部に、G (グアニン) とA (アデニン) の2塩基が何度も繰り返して配列している領域があります。この2塩基の繰り返しの回数は個人によってことなっており、この配列の多様さをマイクロサテライト多型 (GAリピート多型) と呼びます。ヒトの強皮症患者でも、皮膚ではFLI遺伝子の発現が低下していることが明らかになったことから、本研究ではFLI1遺伝子のGAリピート多型と全身性強皮症との関連の解析を行いました。

マイクロサテライト多型と強皮症発症との関連性を示唆

本研究では639人の全身性強皮症患者と、対照となる851人の健常者の遺伝子を比較して解析を行いました。解析の結果GA配列のリピート数は11回から31回までの分布が見られ、患者群は有意にリピート数が多い方向に偏っていました。さらに、GAリピートの22回以上の繰り返しは患者群で有意に多いことが明らかになりました。また、この関連性は皮膚硬化の強い群においてより強い関連性が見られました。遺伝子 (DNA) からタンパク質が作られる段階で、DNA配列の情報は一度mRNAに写し取られます。そこで、GAリピートの数と末梢血中のFLI1 mRNAの量の関連性を調べました。強皮症患者は健常者と比べて、FLI1 mRNAの発現量に減少傾向が見られました。モデルマウスを用いた研究では、Fli1の発現量が低下することで強皮症の様な症状が確認されています。今回の研究結果から、ヒトにおいても強皮症の症状とFLI1遺伝子の発現量との関連性が示唆されました。GAリピート数がエピゲノム修飾に関与している可能性も考えられており、さらなる解明が待たれます。

出典元
筑波大学 注目の研究

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