神経の変性とタンパク質のアルギニンメチル化の関連を解明
大阪大学大学院をはじめとする研究グループは、タンパク質のアルギニンメチル化に関わる酵素が、細胞内に存在するゴルジ体の構造を制御していることを明らかにしたと発表しました。この酵素は神経細胞の伸長制御も担っており、脊髄小脳変性症(指定難病18)の発症メカニズムへの関与も明らかになっています。
タンパク質のアルギニンメチル化と神経変性疾患
生物の身体は非常に多くの種類のタンパク質から構成されます。タンパク質の働きを制御するアルギニンメチル化と呼ばれる修飾(加工) は、生命活動の維持に非常に重要な手続きです。これまでの研究でアルギニンメチル化を担うPRMT1が脳の発達において重要であると明らかになっていますが、脳の発達のどの段階においてどのように働きかけているかは詳しく明らかになっていません。細胞内で作られたタンパク質は、細胞内のゴルジ体の中で様々な修飾を受けて目的の場所まで輸送されます。ゴルジ体の機能に障害があるとアルツハイマー病などの神経疾患にも繋がることが知られていますが、ゴルジ体の昨日を制御するメカニズムはまだ不明な点が多く残っています。
脊髄小脳変性症に関わるタンパク質とゴルジ体の構造の調節
ゴルジ体の機能は、ゴルジ体の構造によって制御されます。脊髄小脳変性症に関わることが明らかになっているSCYL1と呼ばれるタンパク質は、ゴルジ体の構造決定に関与しています。研究グループはこのSCYL1タンパク質に着目し、機能を調節するアルギニンメチル化との関連性を解析しました。研究の結果、SCYL1タンパク質はPRMT1によりアルギニンメチル化の修飾を受けていることが明らかになりました。さらにSCYL1タンパク質がアルギニンメチル化修飾を受けないとゴルジ体の構造形成に異常が起こることも解明され、ゴルジ体の構造に異常があると神経細胞の伸長が正常に行われないことが明らかになりました。こうした結果から、脊髄小脳変性症をはじめとする神経変性疾患の病態解明や新規治療法の確立にも繋がると期待されています。
出典元
大阪大学 プレスリリース