新生児におけるミトコンドリア心筋症の原因遺伝子を特定
順天堂大学大学院医学研究科 難病の診断と治療研究センターをはじめとする研究チームは、心筋異常を主な症状とするタイプのミトコンドリア病である、新生児ミトコンドリア症候群患者にみられる原因遺伝子を特定したと発表しました。今回の発見により早期遺伝子診断や精度向上、治療法の開発にもつながると期待されています。
ミトコンドリア病の症状と遺伝子異常の関連性
ミトコンドリアは細胞内で、酸素からエネルギーを生み出す機能があります。ミトコンドリアに異常が起こり働きが低下すると、細胞はエネルギーを活用できずに働きが悪くなります。このように、ミトコンドリアの機能が低下し影響が現れる疾患をまとめてミトコンドリア病と呼びます。ミトコンドリア病は全身に様々な症状があらわれますが、そのうちミトコンドリア心筋症は心筋異常を主症状としており、予後が悪いことが多く重症化しやすい疾患です。過去の研究より、小脳に異常が起こるタイプのミトコンドリア病でATAD3遺伝子が欠失していることが明らかになっています。そこで今回は、ミトコンドリア心筋症に対するATAD3遺伝子の関与を明らかにするために国際的な大規模の調査を行いました。
遺伝子の異常と病態の関連性を明らかに
今回の国際的な調査の結果、日本の4症例を含む17症例でATAD3遺伝子の異常が見つかりました。これらの症例の多くでは胎児のうちから症状があらわれており、新生児の初期から重症化がみられました。これらの患者の遺伝子を解析した結果、ATAD3遺伝子の重複が見つかり、重複するATAD3遺伝子のタイプにより、ATAD3A/Cの融合遺伝子が生じるかまたはATAD3Bが1コピー増えることが症状に影響を与えている可能性が示唆されました。さらに、ATAD3遺伝子の重複はATAD3遺伝子の欠失とは異なり、異常なタンパク質が増加するために、重篤なミトコンドリア心筋症を発病させると明らかになりました。