慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)に関する本邦初の大規模な全国調査を実施
聖マリアンナ医科大学 新井文子教授らのグループは、慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)患者に対する過去最大規模の全国調査を実施したことを発表しました。今回の調査により、小児と高齢の発症では症状や予後に差があることや、現在の化学療法では効果が不十分であることなどが示されました。
限られた患者のみが発症するありふれたウイルスの感染症
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は、通常はB細胞を標的とするはずのEBウイルスが免疫細胞のT細胞やNK細胞に感染し異常な増殖を誘発することが原因で発症します。CAEBV患者では感染した細胞が腫瘍化し、強い炎症が引き起こされます。EBウイルス自体はヘルペスウイルスの仲間で、ほとんどの人が大人になるまでに感染するようなありふれたウイルスです。しかし、なぜ一部の患者でのみ感染細胞が異常な増殖を示し腫瘍化するのかは明らかになっていません。CAEBV患者は東アジアや中南米に多い一方で欧米での症例が少ないことから、遺伝的背景が原因と考えられていますが、患者数が少なく詳細な解明には至っていません。近年になってようやく診断基準なども整備されはじめ、診断方法なども少しずつ標準化されてきました。そこで研究グループは、CAEBV患者の多くが該当するとされる全身性CAEBVについて、患者の実態や臨床像を把握するために全国的な調査を行いました。
本邦初の大規模な全国調査
研究グループはまず全国の小児科や血液内科に対しアンケートを実施し、1~78歳(中央値21歳)100例の患者情報を入手しました。臓器や組織から細胞を採取し観察(病理検査)により診断がついた患者は約15%、血液中の免疫細胞へのEBウイルスの感染を調べて診断がついた患者は約85%でした。9歳未満の小児発症例、10-45歳の思春期/成人発症例、45歳以上の高齢発症例の3群に分けて解析したところ、小児発症例では約78%が男性である一方高齢発症例では約85%が女性でした。また、思春期/成人発症例では性差が見られませんでした。健常人に由来する造血幹細胞を移植する治療法を行った患者は3年生存率が85%、化学療法後に移植する治療法を行った患者は3年生存率が65%であった一方、化学療法のみを行った患者は3年生存率が0%でした。今回のように、CAEBVについて全国的な規模で行われた調査は初めてです。CAEBVは日本国内はもちろんのこと諸外国でも注目される疾患です。さらなる診断法および治療法の早急な開発が必要であることを示す、非常に重要な調査結果となりました。