エンスプリング(一般名:サトラリズマブ)、視神経脊髄炎スペクトラム障害について国内製造販売承認を取得
中外製薬株式会社は2020年6月29日、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング®」(一般名:サトラリズマブ(遺伝子組換え))について、視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防を効果、効能として製造販売承認を取得したことを発表しました。抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)に対して有効性が示されており、中外製薬独自のリサイクリング抗体技術をはじめて適用した薬剤です。
エンスプリングの有効性の確認
中外製薬の創製したエンスプリングは、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体で、独自のリサイクリング抗体技術が初めて適用されています。免疫機能に関与しているサイトカインであるIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制するとされています。過去に行われた2本の国際共同治験において、NMOSDの再発リスクを有意に減少させることが示されました。
長期間効果が持続する抗体の開発
通常、抗体は細胞にある受容体などの抗原と結合し取り込まれた後は細胞内で速やかに分解されます。体液中に存在する可用性の抗原に結合した抗体は細胞内に取り込まれず、結合したままの形で血液中に蓄積されるため、抗体の効果を長時間持続させるためには多量の抗体を投与しなければいけません。この問題点を解決するために開発されたのがSMART-Ig®(リサイクリング抗体®創製技術)です。リサイクリング抗体®は一度結合した抗原と抗体が特定のpH条件のもとでは離れるように設計されており、一度結合した抗原のみがリソソーム内で分解されるため、抗体は何度も別の抗原と結合できます。
過去に行われた2つの国際共同治験
今回の承認は、先立って行われた国際的な2試験の結果に基づいています。SAkuraSky試験(NCT02028884)ではエンスプリング(サトラリズマブ)と免疫抑制剤との併用療法によりNMOSDの再発リスクが有意に減少することが示されており、SAkuraStar試験(NCT02073279)ではエンスプリング(サトラリズマブ)単剤療法によりNMOSDの再発リスクを有意に減少させることが示されました。同薬剤は2019年に厚生労働省より希少疾病用医薬品に指定されていました。
出典元
中外製薬ニュースリリース