小児の腎臓難病に関わる新たな遺伝子の同定
神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野をはじめとする研究グループは、タンパク尿を防ぐ腎糸球体を構成する膜構造に重要なネフリンの遺伝子NPHS1が、小児のステロイド感受性ネフローゼ症候群の疾患感受性遺伝子として重要だと明らかにしました。ネフローゼ症候群(指定難病222)は、尿中にタンパク質が多量に流れ出てしまうために血液中のタンパク質量が少なくなる疾患です。指定難病だけでなく小児慢性特定疾病にも指定されています。
小児ネフローゼ症候群とステロイド感受性
ネフローゼ症候群は小児患者にみられる慢性腎疾患でも最も患者数の多い疾患です。小児ネフローゼ症候群患者の多くはステロイド薬の使用によって症状が回復するステロイド感受性のネフローゼ症候群であり、他の20%程度の患者は大人になっても症状の再発を繰り返します。ステロイド感受性のネフローゼ症候群に関して、これまでの研究によりHLA-DR/DQと呼ばれる遺伝子が疾患感受性に関わっている遺伝子であると明らかになっていますが、HLA以外の疾患感受性遺伝子は明らかではありませんでした。
ネフローゼ症候群に関連の高い遺伝子を同定
本研究では全国の専門医より約1,300例の小児患者ゲノムDNAが収集されました。そのうち987例のステロイド感受性ネフローゼ症候群患者と、比較対照として健常者検体3,206例に対しゲノムワイド関連解析(GWAS)を行いました。比較の結果、19番染色体上にあるNPHS1-KIRREL2という領域に関連を示す遺伝子の多型が見つかりました。さらに日本人以外の複数の人種を含めた解析の結果でも、NPHS1に起こる遺伝子変異の多様さと疾患には相関があることも明らかになりました。NPHS1は尿中へのタンパク質漏出を防ぐ腎糸球体スリット膜の非常に重要なタンパク質であるネフリンをコードする遺伝子として知られます。これらの研究成果から、小児ネフローゼ症候群の発症機序解明や新たな治療法が期待されています。
出典元
神戸大学研究ニュース