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進行性骨化性線維異形成症モデルマウスを用いたラパマイシンの効果検討

京都大学 iPS細胞研究所 CiRAは2020年6月5日、進行性骨化性線維異形成症(FOP 指定難病272)の病態を再現した疾患モデルマウスに発生した異所性骨に対し、ラパマイシンが優れた抑制効果をもつことを発表しました。FOPは、小児期から全身の筋肉や周囲の腱などが骨に変わってゆく疾患です。これにより、関節の可動域が狭くなるなどの症状がみられます。日本国内の患者数は100人にも満たないと推定されています。

FOPは、全身の靭帯や腱が骨化していく進行性の疾患です。ACVR1と呼ばれる受容体遺伝子の点突然変異が起こることで発症します。アクチビンAと呼ばれるタンパク質がACVR1に結合することで異所性骨化の指令が伝わることが明らかになっています。異所性骨化のきっかけとして、外傷により引き起こされる場合と、明らかな原因がなく引き起こされる場合があります。骨や軟骨などの間葉組織に分化する能力を持った細胞(間葉系間質細胞)が凝集することでえ骨形成が引き起こされると考えられていますが、詳細はまだわかっておらず、有効な治療法は確立されていません。そこで本研究では、FOPの病態を再現した疾患モデルマウスを用いて、自然に形成される異所性骨、外傷後に形成される異所性骨、異所性骨切除後の再発に対し、既にFOP患者由来のiPS細胞でアクチビンAによる軟骨文化抑制効果があることが知られている「ラパマイシン」の効果確認を目指しました。

・自然発生する異所性骨に対するラパマイシンの予防的投与
生理的食塩水を投与したマウスと比較し、ラパマイシン投与群では異所性骨の発生率および体積の低下が確認されました。

・外傷後異所性骨化に対するラパマイシンの投与時期の検討
FOPマウスに対し人工的に骨格筋損傷を加え、ラパマイシンを損傷前および損傷時にそれぞれ投与した場合の異所性骨化の体積を比較しました。その結果、筋損傷部位での異所性骨化はどちらの投与マウスでも抑制が認められました。筋損傷後の、非損傷部位における異所性骨形成はどちらの投与群にもみられますが、ラパマイシンを損傷前に投与したマウスでのみ有意に抑制されました。

・異所性骨化形成初期におけるラパマイシンの効果
筋損傷後初期のFOPマウスの組織片ではラパマイシンにより炎症細胞の浸潤が抑制されており、異所性骨化形成初期におけるラパマイシンの抑制効果が認められました。

・異所性骨切除後の再発に対するラパマイシンの効果
骨格筋損傷後に形成された異所性骨を切除することで異所性骨の再発が評価可能です。ラパマイシンを切除時に投与した群および先行的に投与した群ではどちらも再発抑制効果が認められましたが、その効果は先行的に投与した群の方が顕著でした。

モデルマウスを用いた今回の試験結果は、臨床の場面においてもラパマイシンの有効性を示唆しています。より安全性、確実性の高い治療法の開発が期待されています。

出典元
京都大学 iPS細胞研究所 CiRA ニュース

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