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潰瘍性大腸炎の内視鏡画像評価をAIで行う画像支援システム「DNUC」を試験的に開発

東京医科歯科大学は3月2日、潰瘍性大腸炎(UC)の内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム「DNUC」を試験的に開発したと発表しました。

このシステムは、同大医学部附属病院消化器内科の竹中健人助教と東京医科歯科大学高等研究院の渡辺守院長と東京医科歯科大学医学部附属病院光学医療診療部の大塚和朗教授のグループがソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社に共同研究の協力を得て開発したものです。研究成果は、国際科学誌「Gastroenterology」に、2月11日にオンライン版で発表されました。

「深層学習」を用いた内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム

慢性の炎症性腸疾患のひとつである潰瘍性大腸炎は、症状の寛解と増悪を繰り返し、日常生活の質に強く影響する病気です。近年では、治療が進歩したため、症状を抑えるだけでなく、病気の「炎症そのもの」をコントロールすることも可能となりつつあります。

炎症のコントロールには、症状寛解だけでなく「粘膜治癒」を達成することが重要で、内視鏡検査によって「内視鏡的な寛解」と「組織学的な寛解」を評価することが必須です。しかし、その評価には病気に対する知識や経験が必要であり、医師の主観に基づくため、相違が生じるという問題があります。また、「組織学的な寛解」評価のためには、内視鏡検査で粘膜生検を採取する必要があり、採取に伴うコストの増加や合併症のリスクが避けられません。

人工知能(AI)技術の進歩により、医療の領域でもさまざまなコンピューター支援機器の開発が進められています。今回の研究では、「深層学習」というAI技術を用いることで、潰瘍性大腸炎の内視鏡画像に基づくコンピューター画像支援システム(DNUC; deep neural network system based on endoscopic images of ulcerative colitis)を開発し、その精度を前向きに検証することを目的としました。

「内視鏡的な寛解」と「組織学的な寛解」に対する精度はともに9割越え

研究グループは、潰瘍性大腸炎患者さんに施行された下部消化管内視鏡の画像と粘膜生検を見直し、AI学習に適切と思われるデータ(2012名、40758画像、6885粘膜生検)を収集。その後、すべてのデータに対して「UCEISスコア」と「Geboesスコア」を専門医により点数付けし、UCEISスコア0点を「内視鏡的な寛解」、Geboesスコア3.0以下を「組織学的な寛解」と定義しました。このデータセットを学習データとして、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの協力を得て「DNUC」を開発しました。

その後、DNUCの精度検証として、下部消化管内視鏡を行う潰瘍性大腸炎患者さんに対し、この研究について説明を行い、同意を得た上で、内視鏡検査と粘膜生検を行いました(875名、4187画像、4104粘膜生検)。内視鏡評価については、専門医3名の合議によって決められ、組織評価については、病理専門医および専門医の合議によって決められました。これより得られたデータを検証用データとして解析したところ、DNUCの「内視鏡的な寛解」に対する精度は90.1%、「組織学的な寛解」に対する精度は 92.9%を示しました。

今後、DNUCを改良することで必要な粘膜生検の回数を減らすことができると考えられることから、同大は引き続きソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズとの包括連携プログラムに基づき、同システムを内視鏡動画へ適応させる研究を進めて行く予定だそうです。

研究グループは、プレスリリースにて以下の通りDNUCへの期待を述べています。

我々はDNUCが臨床現場で必要となることを強く確信し、臨床応用できることを目指しています。将来的には世界中で、潰瘍性大腸炎に対する内視鏡評価の方法や基準が変わる可能性を期待しています。

東京医科歯科大学 プレスリリースより

出典元
東京医科歯科大学 プレスリリース

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