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タンパク質「SDR9C7」が皮膚バリアの形成過程で重要な働き、先天性魚鱗癬の新規治療法の開発に期待

変異型SDR9C7タンパク質で酵素活性の著しい低下を確認

日本医療研究開発機構(AMED)は1月22日、タンパク質「SDR9C7」が、皮膚バリアの形成に必須なセラミドの結合において、重要な働きをすることを解明したと発表しました。この研究成果は、名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学の武市拓也講師、秋山真志教授ら研究グループによるものです。

研究グループは、SDR9C7遺伝子の変異を持つ難病である先天性魚鱗癬の患者さんと、Sdr9c7遺伝子を人為的に破壊したマウスの皮膚組織について、詳細な脂質成分の分析を実施。対照である健常人の皮膚組織と比較し、主に角層細胞脂質エンベロープ(CLE)を担っている結合型セラミドの含有量が低下していることが判明しました。

さらに、SDR9C7タンパク質が直接関与する脂質の代謝経路を見つけるために、野生型のSDR9C7タンパク質と先天性魚鱗癬の患者さんに見られる変異型SDR9C7タンパク質を作製し、それぞれの酵素の活性を測定。その結果、SDR9C7タンパク質は、アシルセラミドが持つ脂肪酸のアルコール基をケトン基へ変換する、脱水素反応を触媒する酵素であることを突き止めたそうです。また、変異型SDR9C7タンパク質では、この経路の酵素活性の著しい低下が認められたとしています。

皮膚のバリアの要として働くセラミドの層であるCLEは、皮膚のバリアにとって最も重要な構造のひとつです。今後の展望として、研究グループは以下の通りコメントしています。

今回の研究成果から、SDR9C7タンパク質が皮膚バリアの形成過程において非常に重要な働きをしていることが明らかになりました。本研究の成果により、皮膚バリアの形成の詳細なメカニズムが明らかになるとともに、難病である先天性魚鱗癬のみならず、皮膚バリアの障害によって起きるアトピー性皮膚炎や他のアレルギー疾患の病態の解明と、SDR9C7タンパク質を標的とした新規治療法の開発が期待されます。

https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20200122.html

先天性魚鱗癬

先天性魚鱗癬は、生まれつき皮膚の表面が厚く、硬くなる、稀な遺伝性の皮膚疾患で、厚生労働省の指定難病に指定されている疾患のひとつです。近年、先天性魚鱗癬の病因遺伝子が解明されていますが、未だに原因遺伝子の異常が先天性魚鱗癬の臨床像を来すそのメカニズムは、不明な点が多く残っています。先天性魚鱗癬の多くの患者さんは、生涯に渡って、皮疹、掻痒や亀裂による疼痛に悩まされますが、有効な治療法は確立されていません。

セラミド

皮膚の最外層に位置する角層は、脂質を多く含み、皮膚のバリア機能や水分保持機能に重要な役割を持っています。角層の主な脂質は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸等で形成されており、その約50%をセラミドが担っています。このセラミドの代謝経路に関わるさまざまな遺伝子の変異が、先天性魚鱗癬の原因遺伝子として報告されています。

出典元
日本医療研究開発機構 成果情報

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