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「SLE(全身性エリテマトーデス)」について知ろう

2019年11月30日(土)朝刊より 読売新聞西部本社より許可を得て転載

 自身を守るべき免疫が正常な細胞や組織を攻撃し、関節や臓器に障害を引き起こす「膠原病」。膠原病の一つで女性に多く見られる「SLE(全身性エリテマトーデス)」をテーマにした市民公開講座が11月3日、福岡市博多区で開かれました。産業医科大学 医学部 第一内科学講座の田中良哉教授が、難病に指定されているSLEの病態や最新の治療方法などについて解説したあと、患者やその家族を交えてQ&A形式のパネルディスカッションが行われました。会場には大勢の市民が詰めかけ、田中教授のアドバイスに熱心に耳を傾けました。

■免疫異常 全身に多様な症状

 SLEは、若い女性に多い難病です。厚生労働省は難病について①病気のメカニズムがわかっていない②治療方法が確立されていない③希少な病気である④長期の療養を必要とする―と定義をしています。
 難病の中には指定難病と呼ばれるものがあり、これには医療費の助成制度があります。指定難病には膠原病をはじめホルモンの病気、肝臓や腎臓、神経などの病気、遺伝病など330もの病気が認定されています。
 膠原病関係ではSLEをはじめ皮膚筋炎、全身性強皮症、ベーチェット病、ANCA関連血管炎、高安動脈炎などが認定されています。
 SLEはリンパ球の病気だということが分かってきました。リンパ球は外から入ってきた菌に抗体をつくって、退治する役割があります。例えば、風邪を引いたら、喉にウイルスがつきますが、そこにリンパ球が集まってきて、ウイルスをやっつけてくれます。リンパ球が体を守る仕組みを免疫といいます。
 ところが、リンパ球が間違って、自分に対して抗体をつくり皮膚や腎臓、中枢神経などを攻撃してしまうことがあり、それが炎症を引き起こします。炎症が皮膚で起こると紅斑が現れます。紅斑のほか発熱や疲労感などの初期症状があり、進行すると全身の臓器に障害を引き起こします。
 このように自己抗体が全身を攻撃する病気を「自己免疫疾患」といい、その一つがSLEになるわけです。
 SLEの全国患者数は6~10万人と言われ、9割が女性で20代から40代で発症することがほとんどです。診断にはSLEの特徴的な症状や診察所見に加えて、血液検査や画像検査などで総合的に判断します。

■治療は薬物療法

 ではどのように治療するか。臓器障害の有無によって治療方針が異なり、治療は必要ない場合や長期にわたって治療が必要な場合まで様々です。薬で病気をコントロールすることで健康な人と変わらない生活が送れる可能性もあります。自己免疫疾患には、異常をおこしているリンパ球を抑制する免疫抑制薬、世界的に使われている免疫調整薬、炎症を鎮めるステロイド、それから今後は生物学的製剤(バイオ製剤)といった薬があります。
 適切な診断や治療が一生を左右する場合もあり、まずは専門医にかかることを強くお勧めします。SLEの治療方針は、臓器障害がなければステロイドは使わず、免疫調整薬で経過観察をする対症療法が主になります。
 臓器障害があればステロイド、免疫抑制薬などを用いて徹底的に治療し、症状が出ない状態が続く“寛解”の導入を目指します。それで症状が緩和すれば薬を減らしステロイドの中止を目指します。
 生物学的製剤(バイオ製剤)は生物から作られるタンパク質で精製するバイオ医薬品で、体の中に存在するTNFなどのサイトカインやリンパ球などの病気にとって重要な分子をピンポイントで攻撃してくれます。

■適切な治療 日常生活を守る

 私たち医師は患者さんの立場になって薬を選び、患者さんの将来のことを考えながら日々、治療に当たっています。患者の皆様はまず自分たちのライフスタイルを守り、自分でできることを探し、助け合っていってほしいと思っています。また、自分が納得するまで、医師や看護師に話を聞く、または友の会にも積極的に参加して欲しいと思います。膠原病治療については今、どんどん新しい薬がでてきています。SLEも臓器障害が起きなくなる日が来るはずです。決してあきらめないでください。

SLE(全身性エリテマトーデス)Q&A

患者やその家族からの質問に田中教授がお答えしました(一部抜粋)

―症状の再燃が不安です。再燃への対策を教えてください。
日常で気を付けることは、疲れすぎないこと。ご自身の体と相談しながら生活や仕事をしてください。また風邪などの感染症にかからないこと。日光(紫外線)が症状の悪化と関係することがあります、可能な限り日差しを避けましょう。

――子供がSLEを発症しました。保護者として気を付けることはありますか。
まずは、親子でSLEやその治療薬について正しい情報や知識を共有することです。重要なのは支えてあげること、そして病気を理解してあげることです。病気について分からない事があれば遠慮なく医師に相談してください。医師に聞きづらければ看護師さんに聞いてください。一人で悩まず何でも相談することが大切です。

――妊娠・出産で症状が再燃することはありますか。
出産とともに症状が再燃、悪化することはあります。妊娠をしたら専門医にしっかり相談してください。

イベント主催:グラクソ・スミスクライン株式会社 協力:一般社団法人全国膠原病友の会/全国膠原病友の会福岡県支部 後援:読売新聞社

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