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オンライン講座「脊柱靱帯骨化症のゲノム解析研究の現状と展望」が開催

2020年9月4日、脊柱靱帯骨化症に関わるゲノム解析研究の最新の知見についてオンライン講座が開催されました。

【主催】NPO法人難病ネットワーク
【共催】北海道脊柱靱帯骨化症友の会
【講師】理化学研究所・生命医科学研究センター・骨関節疾患研究チーム 池川志郎先生

■ゲノムの基礎知識

ゲノム(genome)は、生物の生命活動を規定する遺伝情報のセットを示します。遺伝子は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類の塩基の並びから構成されます。ヒトのDNAの塩基対の数は約30憶個にものぼります。近年はパーソナルゲノム時代と呼ばれ、個人のゲノム情報をもとに患者に合わせた適切な医療の実現が目指されています。病気の原因や病気のかかりやすさだけでなく、進行具合や薬の効きやすさなどもゲノム情報から読み取れます。2014年には「1,000ドルゲノムプロジェクト」が達成され、ヒト1人の全ゲノム情報が1,000ドルで解析できるようになりました。さらに現在では、数100ドルで解析できるようになり、今後さらに安価でゲノム解析できる時代になると予想されています。

■後縦靭帯骨化症のゲノム解析研究

ゲノム情報は難病の病態解明にも役立てられています。難病患者のゲノム情報を読み取ることで、画期的な治療法の開発に繋げようと計画されています。2000年より日本でも骨関節の難病のゲノム解析が始まりました。後縦靭帯骨化症(OPLL)のほか、変形性膝関節症、側弯症、椎間板ヘルニアなども研究が進められています。OPLLは脊柱の靭帯が骨になってしまう難病である脊柱靱帯骨化症の一種です。異常な骨のできる場所によって麻痺やしびれ、痛みなど様々な症状が広い領域でみられます。1975年に脊柱靱帯骨化症の研究班が立ち上がりました。2014年にOPLLの原因遺伝子が存在するゲノム領域が6つ見つかっています。さらに2016年には原因遺伝子の1つであるRSPO2遺伝子が特定されました。2019年には原因遺伝子が存在するゲノム領域がさらに14つ見つかりました。このように、研究が大きく進展した要因として、患者、医師、研究者がそれぞれ密に協力で来ていたことが挙げられます。全国脊柱靱帯骨化症患者家族連絡協議会を筆頭に、多くのOPLL患者が研究に参加し、サポートしてきました。その結果1500を超える患者データが入手できたことから研究は大きく進みました。

■今後の脊柱靱帯骨化症の研究

これまでの研究より、肥満とOPLLの原因遺伝子には強い正の相関があることが示されました。さらに、糖尿病とOPLLにも強い正の相関があることも明らかになりました。その他にも、低リン酸血症のような他の疾患との遺伝的関連も徐々に分かってきており、様々な疾患とOPLLの遺伝子の関連が調べられています。また、胸椎のOPLLは特にゲノム解析が進んでおり、頸椎のOPLLと胸椎のOPLLは発症年齢が若いことや、女性患者が多いことなど、異なる特徴を示すことが明らかになりました。こうした背景から、胸椎OPLLの病態解明を進める国内プロジェクトも発足しています。今後の研究の進展が期待されます。

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