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米国で試験開始…間もなく、「DNAを手術する時代」がやってくる

… ムコ多糖症Ⅱ型(別名ハンター症候群)」と呼ばれる深刻な遺伝性疾患。この病気は、(性染色体の一種である)X染色体上に存在する「IDS」と呼ばれる遺伝子の変異(異常)によって引き起こされる。 IDS遺伝子が異常を来たすと、人体内で生じる有害な多糖化合物を分解するの …

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RareS.コメント

日本では指定難病になっているライソゾーム病の一種「ハンター病」(ムコ多糖症Ⅱ型)の患者の体内でゲノム編集を行い、難病を治療する臨床研究が昨年11月に米国で開始され、今月5日、その途中経過が報告されました。

ライソゾーム病は、細胞内の不要な物質を分解する機能を持つライソゾーム(リソソーム)が、分解する際に必要な武器である酵素の異常によりうまく機能せず、細胞内に不要な物質が溜まってしまうことで、結果的に症状を起こします。酵素の異常は、遺伝子の変異により起こり、働かなくなった酵素の種類ごとに概ねそれぞれ異なる名前がつけられています。その中でもハンター病は比較的多い方の病気で、IDSと呼ばれる遺伝子の変異によりIDS酵素が分泌されなくなり、骨格変形や低身長、重度の場合は精神運動発達遅滞、心臓障害などを起こします。

今回発表された臨床研究ではゲノム編集第1世代の「ジンク・フィンガー・ヌクレアーゼ(ZFN)」、第2世代の「TALEN(ターレン)」、第3世代の「クリスパー・キャス9」のうち、最初のZFNを利用して行いました。ZFNに関しては、一度患者の細胞を取り出して操作を行い、体に戻すという体外治療は行われており、すでに一定程度の成果を出している中、今回は患者の体に投与することで体内の治療を目指した試験が行われました。この方法は、適切な場所で適切な編集を行なわなければ、むしろ既存の正常なDNA配列を壊してしまう恐れがあり、高い特異性のある技術が使われています。結果としては、患者に危害を与えることはなく終了しましたが、治療効果に関してははっきりとした効果としては見られませんでした。ただ、今回は安全性を重要視し、注入したゲノム編集液(薬)は極めて微量であったことから、効果が出るための十分量を満たしていなかった可能性も言われています。

また、日本でもこの疾患に対する治療薬の開発は進んでおり、日本発の革新的技術を用いた薬が、2019年には世界に先駆けて日本で製造販売承認申請を実施する予定になっています。 いずれにせよ、急いでしまうばかりに、安全性が疎かになってしまっては元も子もありません。慎重に見極めていきたいですね。

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