病気をきっかけに描く、新しいキャリアのかたち|荻原早苗さん:潰瘍性大腸炎(UC)・医原性副腎皮質機能低下症

39歳で突然「潰瘍性大腸炎(UC)」と診断され、保育士として働いていた生活が大きく揺らいだ荻原早苗さん。体調との向き合い方が日々変わる中で、自分らしい働き方を探し、新しいキャリアへの一歩を踏み出しました。その葛藤と再スタートまでの道のりをお届けします。
これまでの経緯
- 2023年 原因不明の下痢が続いていた。
- 2024年 潰瘍性大腸炎(UC)と診断。
- 2025年 保育士を離職。
- 2025年 WEBデザイナーとキャリアコンサルタントを目指す。
潰瘍性大腸炎(UC)とは?
私が診断された潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸に慢性的な炎症が起きてしまう国の指定難病です。
大腸の粘膜がただれたり、潰瘍ができたりすることで、腹痛や下痢、血便、発熱などの症状が現れます。
原因ははっきりしていませんが、免疫の異常や、腸内細菌のバランスの崩れなどが関係しているとされています。
39歳のとき、私は原因がよく分からないまま、一年ほど下痢が続いていました。
最初に異変を感じたことは、カフェオレを飲むとすぐにお腹を壊すようになってしまい、「なんだろう、これ」という戸惑いでした。
内科を受診しても理由が分からず…
たまたま知人に病名を聞いたことで、消化器内科を受診するきっかけをもらいました。
そこで医師から「潰瘍性大腸炎(UC)かクローン病(CD)の可能性が高い」と言われ、即日検査へ。
結果は、潰瘍性大腸炎(UC)でした。
同時にステロイド薬の長期服用の影響で医原性副腎皮質機能低下症も起こし、免疫を抑える薬の副作用に悩まされる日々が始まりました。
潰瘍性大腸炎(UC)で一番困るのは、調子を崩すと一日に10回以上トイレに行くこともあることです。
腹痛に伴い、ガスが溜まったりお腹が張ったりするので、外出も気が抜けません。
症状が酷い活動期には脂質の多い食事や刺激物、アルコールの過剰摂取は避けるなど、好きなものが自由に食べられないストレスも大きいです。
免疫抑制剤は、合う薬を見つけるまでが本当に大変で、薬を変えるたびに副作用が一気に押し寄せました。
ステロイド薬の服用時はムーンフェイス、頭痛、吐き気、立ちくらみ、湿疹、睡眠障害。
夜、二時間しか眠れないまま仕事に行ったこともあります。
病気での生活
副作用の波に翻弄されながら生活する中で、一番つらかったのは「自分の体が自分のものじゃない感覚」でした。
ステロイド薬を減らせば眠気と脱毛、増やせば頭痛や吐き気。
体力も気力も削られて、通勤するだけで息が上がるほどでした。
保育士の仕事は体力も精神力も必要です。
子どもを抱き上げる、走り回る、感染症が出たら真っ先に対応する。
けれど、免疫抑制剤を使っている私には、自身が感染してしまうリスクが高すぎる環境でした。
症状を職場に伝えても、衛生面等で誤解されることがありました。
もちろん「大丈夫?」の言葉をかけてくださることもありました。
しかしそれは、潰瘍性大腸炎(UC)は他人にうつる病気ではないにもかかわらず、「腸炎って子どもにうつったりしないよね?」や、「本当に子ども達をちゃんと守れるの?」という意味での言葉でもありました。
保育士は子ども達の命を守る仕事です。
そういう意見が出るのもわからなくはありません。
しかし、ただひたすら子どもたちと向き合い保育をし、仕事中に大きなミスをしたわけでもない私にとっては、割り切れない気持ちがずっと心に残っていました。
体調は悪化し、薬剤アレルギーも起こしました。
別の薬剤で、関節が固まって背中が動かない日が続きました。
買い物にも行けず、水分を取ることとトイレだけで一日が終わる生活を3週間ほど経験したとき、「もう限界だ」と離職を決断しました。
3つ目の免疫抑制剤でやっと落ち着き始めたのが現在です。
仕事の遷移
私は元々、歌の養成所に通い、ライブ活動やボイストレーナーの仕事をしていました。
その後、安定した働き方や発達障がいの子ども達の支援を目指して独学で国家試験を受け資格を取り、
保育士になりましたが、病気との両立は想像以上に厳しいものでした。
「体力が戻らないなら、働き方自体を変えよう」と思ったのが、私の転機でした。
そこで始めたのがWEBデザインです。
在宅で、自分の体調に合わせながら働ける仕事に魅力を感じました。
さらに、キャリアコンサルタントの勉強も始めました。
私が仕事に悩んだように、病気や環境の変化で働き方に迷う人はたくさんいます。
そういう人の力になれたらと強く思うようになったのです。
「難病って、どうしてこんなに多くの人が苦労しているんだろう」と疑問を持つようになり、医療や福祉の課題にも興味が広がりました。
また、難病でなくても病気を抱え周囲に言えない苦しさを感じながら働いている方はたくさんいらっしゃる、自分のつらい経験をただの苦しさで終わらせず、誰かの支えに変えたいと思っています。
今後の目標
これからは、WEBデザイナーとキャリアコンサルタントというふたつの軸で、「病気があっても自分らしい働き方ができる社会」を目指して活動していきたいと思っています。
私は、病気によって働き方を見直さざるを得なくなりましたが、同時に「選択肢はひとつじゃない」ことにも気づけました。
体調が不安定でも、自分のペースで挑戦できることがある。
病気だからこそ気づけた優しさや視点が、誰かの役に立てるはずです。
これからは、就労支援やキャリア相談の分野にも踏み出しながら、同じように悩む人たちが安心して仕事と向き合えるような環境づくりに関わっていきたいと思っています。
病気との毎日は決して楽ではありませんが、その中で見つけた希望の光を、誰かの道しるべにできるよう活動を続けていきたいです。
