作業療法士として多くの人の手助けをしたい。岩田あやさん|エーラス・ダンロス症候群(EDS)
今回は、「エーラス・ダンロス症候群」(指定難病168、EDS)という希少難病と向き合いながら作業療法士として活躍する岩田あやさんに、病気との闘いやお仕事のこと、そしてこれからの目標を伺いました。
これまでの経緯
- 18歳 看護学校に入る
- 19歳 初めて手首の手術をする。その際、看護学校を退学。
- 20歳 作業療法士の専門学校に入学
- 22歳 作業療法士の専門学校を卒業
- 25歳 エーラス・ダンロス症候群と診断される
エーラス・ダンロス症候群とは:コラーゲンの異常が引き起こす全身性疾患
エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は、体内でコラーゲンを生成する遺伝子に異常が起きる病気です。
コラーゲンは体の結合組織を形成する重要なタンパク質で、この異常によりさまざまな症状が引き起こされます。
日本では約5000人に1人の割合で発症するといわれていますが、具体的な症状が出ないことに加えて、知識のあるドクターが少ないです。
実際に診断される患者さんは全体でもわずかです。
私の場合、症状は関節・自律神経・消化器の多岐に渡ります。
主に関節の症状が顕著に現れていて、関節がほかの人より緩くなっています。
そのため、捻挫や脱臼を起こしやすいのです。
今まで、肩・膝・指・足首など、さまざまな関節の脱臼を経験してきました。
また、自律神経の症状として低血圧による貧血症状があります。
ほかにも、下痢と便秘を繰り返す消化器系の症状や、血管が脆く痣ができやすいなどの、さまざまな症状と向き合いながら過ごしています。
日常生活での工夫:痛みや苦悩との闘い
エーラス・ダンロス症候群(EDS)の最も大きな特徴の一つは、全身の関節の痛みです。
各関節が緩いため、筋肉で緩みを補おうとする性質があり、常に筋肉痛のような状態が続いています。
この関節痛と筋肉痛、2つの痛みに対処するため、私は痛み止めを服用しています。
また、日常生活ではいろいろな工夫をしています。
普段は電動車椅子を使っていますが、仕事のときは装具を付けて、膝をかばいながら作業をしています。
また、手の指も柔らかいため、装具を付けて脱臼を予防するなど、自身の特性に応じて予防することが多いです。
ほかにも、嚥下障害(食べ物をうまく飲み込むことが難しい障害)もあり、食べ物や水分でむせやすいため、一気に飲み込まないように意識しながら食事をするようにしています。
作業療法士としての仕事:困難を乗り越えて働く
私は現在、作業療法士(OT)として働いています。
ここに至るまでには多くの困難がありましたね。
実はOTを志す前は父親の影響で獣医師を目指していました。
しかし、動物アレルギーがあったことから断念。
「手助けをしたい」という気持ちは変わらず持っていたので、動物ではなく人に貢献する仕事をしたいと考え、18歳で看護学校に入学しました。
23歳で専門学校を卒業するまでに、手首などの関節の手術を繰り返すなど、さまざまな困難を乗り越えてきました。
手術を受けるたびに「この手で何ができるのか。」と落ち込むことも多かったです。
実際に、自身がリハビリテーションを続けていくなかで、少しずつできることが増えていく喜びを感じました。
「この喜びを多くの人へ伝えたい。」「この喜びを創りたい!」という想いと自身の経験が、作業療法士を目指すきっかけになりました。
私はOTとして数回の転職経験があります。
1社目からOTとして1年勤めていましたが、すぐに手首と足首を脱臼し手術が必要になり、2年間休職となってしまいました。
2社目では、1ヶ月弱で体調を崩してしまい、同じく手術が必要になってしまったんです。
結果2社目も退職となりました。
その後、自身の病気を諦めずに挑戦を続けた結果、現在の職場では4年目を迎えています。
私自身が患者の立場を経験しているので、患者さんの気持ちを理解したいと考えています。
また、OTの視点、患者の視点の双方の視点からリハビリテーションに向き合うことができます。
自身が患者であり医療者という双方の経験や想いを強みにして、より良いリハビリテーションを提供したいと考えながら、日々業務にあたっています。
今後の目標:在宅OTの夢
この病気は、進行性の病気のため、最終的には体が動かしづらくなる可能性があります。
もしそのようになっても、私はOTとして働きたいです。
これは構想段階ではありますが、例えば、オンラインで、日常生活を観察・評価し、その方の相談役としてサポートすることもできるのではないかと考えています。
在宅からOTとして働ける可能性もあるのではないかと思います。
今後の目標は、自分の特性や場所などの環境に左右されず、OTとして活躍することです。
岩田さんの前向きな姿勢と、周囲の理解や支援があれば、難病があっても充実した人生を送れることを教えてくれました。
エーラス・ダンロス症候群(EDS)という希少難病と向き合いながらも、夢に向かって歩み続ける岩田さんの姿は、多くの人々に勇気と希望を与えてくれるのではないでしょうか。