「ペンタスの会」:筋炎患者と共に「明日への希望」を育む
この記事は、2025年4月に行われた「ペンタスの会(皮膚筋炎・多発性筋炎の会)」とのウェブヒアリングの内容をもとに作成しています。
「ペンタスの会」は、皮膚筋炎・多発性筋炎患者が互いに支え合い、病気と向き合うための患者会です。発足から現在に至るまで、患者中心の活動を続け、多くの患者に希望を届けています。
会の発足と「ペンタス」に込めた願い
「ペンタスの会は2008年、皮膚筋炎・多発性筋炎の患者と家族の会として発足しました。当時から「膠原病友の会」はありましたが、筋炎に特化した情報や交流の機会がありませんでした。独自の会を作って欲しいとの筋炎患者の声がペンタスの会を立ち上げるきっかけとなったのです。初代会長が看護師ということもあり、その専門知識が「病気の完治を目指す」という会の趣旨につながりました。
会の名称は、病名を直接的に使うことを避け、花言葉に「明日への希望」「願い事」「願いは叶う」といった意味を持つ「ペンタス」から名付けられました。これは今から振り返ると、個人情報保護の観点からも素晴らしい配慮であったと評価されています。
発足当初からの広がりと会員数の推移
会が設立された当初、朝日新聞で「ペンタスの会」が単独で8回にわたる連載記事として紹介されました。これがきっかけとなり、会を知り、参加する会員も増えました。
また、会の設立時には神奈川難病連にも大変お世話になったとのことです。
低迷期があったものの、近年は毎年十数名の新規入会があり、著しい増加を見せています。
会員増加の背景には、筋炎を専門とする医師が会の活動を認め、協力してくれていること、横浜市(特に各区)で開催される講演会での広報活動、そしてホームページを通じた入会などがあります。
対象疾患と活動方針
主な対象疾患は「皮膚筋炎」と「多発性筋炎」ですが、会の基本方針・活動方針では、これらに加え、無筋症性皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、封入体筋炎の3つを含めた計5つの疾病の会と位置づけています。
原則として筋炎の患者や家族が会員の対象ですが、症状が筋炎に非常に似ているという方も、正式な会員でなくとも活動に参加することは可能としています。ただし、積極的に筋炎以外の患者を受け入れているわけではありません。
活動・交流と情報発信
コロナ禍前は年6回の対面交流会を実施していましたが、現在は年間4回を対面、2回をオンライン(Zoom)での交流会として開催しています。オンライン交流会は、対面での参加が難しい会員も参加しやすいと好評です。交流会には毎回10名から15名程度が参加し、遠方からの参加者もいます。
情報発信と共有にも力を入れています。年2回(16ページ)の会報誌を発行し、交流会の内容や病気に関する正確な医療情報などをまとめて会員に送付しています。
特に、交流会に参加できなかった会員へ情報を届けることを重視しています。会報誌のほか、メールマガジンを月に2回会員全員に配信しています。また、交流会に参加できず、メールマガジンも受け取れない会員向けに、情報をまとめた「瓦版(かわらばん)」を郵送しています。ホームページでは、活動報告や医療情報などを掲載し、過去の活動記録を残すことを大切にしています。
医療講演会への参加・協力も積極的に行っています。横浜市で毎年開催される筋炎に関する講演会では、講師の医師の講演に加えてペンタスの会の活動紹介も組み込まれており、講演会参加者からの入会につながる例もあります。また、「日本臨床皮膚科学会学術大会」でも展示コーナーを設けてもらっています。
ペンタスの会は法人格を取得しておらず、「人格なき社団」(任意団体)として活動しています。そのため、銀行口座の管理などで苦労があるとのことです。
今後の目標と課題
ペンタスの会の今後の目標は以下の通りです。
- 正確な情報の提供と共有の継続:病気に関する正確な医療情報や新しい治療法(治験情報を含む)について、会員やまだ会とつながっていない患者に分かりやすく伝え続けることを最も重要な目標としています。
- 希望の発信:かつては治療法が少なく、治療法の確立はずっと先のことと思われていたこの疾患も、近年は新しい薬の開発が進み「治るかもしれない」「明日はもっと良くなるかもしれない」という希望が見えてきた「ターニングポイント」にあると捉えています。この変化や希望を、特に情報から取り残されがちな人たちに積極的に伝えていきたいと考えています。
- 時代に即した活動:インターネットで情報を得る人が多い現代において、ホームページなどを通じて「今の時代は以前とは違う、新しい治療の選択肢が出てきている」というメッセージを届ける活動を強化したいとのことです。
一方で、いくつかの課題も抱えています。患者側の困りごととしては、担当医とのコミュニケーションや、特に地方における専門医の不足と地域差が挙げられます。
会の運営上の困りごととしては、役員の負担が大きいので役員を増やすことも考えているそうです。
今後、期待される支援としては、情報発信力の強化支援(広報活動のサポート、情報発信ツールの提供や活用支援など)が挙げられます。これにより役員の負担軽減や、会の継続的な活動を支える運営面での助けとなるとのことです。また、専門医へのアクセスの改善に向けた医療体制への働きかけや情報提供の方法の充実も必要と考えているそうです。
若年性患者へのサポート拡充については、医療講演会などで若年性筋炎に関する情報提供が増えてきていますが、ペンタスの会としては、大人の患者の視点からではあるものの、病気のタイプによっては大人と子どもで共通する部分もあるため、新しい文献などを参考に情報提供を行っています。
【疾患解説】
RareS.皮膚筋炎/多発性筋炎のページ参照
https://raresnet.com/disaese/juvenile-dermatomyositis-polymyositis/