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けっせつせいたはつけっかんえん (けっせつせいたはつどうみゃくえん)
結節性多発血管炎(結節性多発動脈炎)polyangiitis nodosa; PN

小児慢性疾患分類

疾患群6
膠原病
大分類2
血管炎症候群
細分類9
結節性多発血管炎(結節性多発動脈炎)

病気・治療解説

概念

結節性多発血管炎は中型血管炎に分類され、中・小型の筋性動脈に壊死性血管炎を認めるが、細動脈や毛細血管には血管炎を認めない原発性血管炎である。細動脈以下の小型血管が主な罹患血管である顕微鏡的多発血管炎とは、病態・症状・病理組織所見・検査所見・予後などが明確に異なる。ANCAが陽性になることはまれである。

病因

結節性多発血管炎の原因は未だ不明であるが、一部の症例ではHBVなどのウイルス感染の関与が報告されている。Chapel Hill Consensus Conference 2012の分類では、特定の病因と関連している血管炎はVasculitis associated with probable etiologyと分類されるが、小児慢性特定疾患治療研究事業では、病因にかかわらず、症状や検査所見から結節性多発血管炎の定義を満たすものを認定対象とする。
結節性多発血管炎の組織像は壊死性血管炎で、急性炎症期には血管外膜に好中球・好酸球・リンパ球などの浸潤と、血管中膜のフィブリノイド壊死像を認める。また、内弾性板の断裂・破壊・消失像を認め、血栓を伴うこともある。内弾性板や外弾性板の破壊により血管壁が脆弱となると動脈瘤が形成され、破裂することもある。肉芽形成期では、外膜側にマクロファージ・線維芽細胞の浸潤を認め、肉芽組織が形成される。内膜には、筋内膜細胞の遊走や,線維芽細胞の浸潤がみられ、内膜肥厚による血管内腔の狭窄をきたす。搬痕期では、内膜の線維性肥厚・中膜の線維化・外膜の肉芽性搬痕組織の形成を認める。

疫学

結節性多発血管炎は、かつては顕微鏡的多発血管炎と同一の疾患と考えられ、結節性動脈周囲炎と呼称されていたため、本邦における結節性多発血管炎のみの疫学は明らかではない。2011年度の結節性動脈周囲炎(結節性多発血管炎と顕微鏡的多発血管炎を合わせた統計)としての特定疾患医療受給者証所持者数は、8928例であり、男女比は2:3である。これまでの報告から、結節性多発血管炎と顕微鏡的多発血管炎の患者比率は1:20程度と考えられるため、結節性多発血管炎の患者数は、全国でおよそ400例程度と考えられる。
小児では、1997年にFujikawaらが全国調査を行い、小児期結節性多発血管炎の有病者数を20例と報告している。平成22年度の厚生労働科学研究(横田班)では、小児科医が常勤する有床病院におけるアンケート調査で、小児期結節性多発血管炎の有病者数を11例と報告している。小児期の血管炎の中では非常にまれであると考えられる。

臨床症状

結節性多発血管炎は、中型血管を中心とした全身の血管炎であり、症状は多彩である。全身症状としては、発熱(38-39℃)、体重減少、倦怠感などを認める。一方、臓器症状は、罹患血管の支配臓器の虚血や梗塞、血管破裂による出血、血管壁の炎症による組織や臓器の炎症により引き起こされる。代表的なものを以下に示す。

1)皮膚症状
結節性多発血管炎の皮膚症状には紫斑・潰瘍・結節性紅斑などがある。四肢(特に下腿)に好発する。重症の皮膚病変では、手指や足趾の梗塞や壊疽を形成することもある。

2)腎症状
腎動脈から小葉間動脈といった中〜小型動脈の障害により腎虚血となり、高レニン血症を伴う高血圧を呈する。尿所見では蛋白尿や血尿を認めることが多い。結節性多発血管炎では、顕微鏡的多発血管炎と異なり、細動脈や毛細血管まで病変が及ばないので、糸球体腎炎は呈さない。

3)神経症状
中枢神経症状は20-30%の患者に出現し、脳梗塞による意識障害や片麻痺を来す。脳梗塞の原因としては血管性と高血圧性がある。末梢神経症状は約80%の患者に出現し、なかでも多発性単神経炎の頻度が高い。

4)消化器症状
腸間膜動脈などの障害による虚血により、腹痛・嘔吐・血便・消化管出血など多彩な症状を呈する。

5)関節・筋症状
関節痛や筋痛の出現頻度は高いが、関節の変形や骨破壊はきたさない。

診断

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治療

寛解導入療法の第一選択薬は副腎皮質ステロイドである。ステロイド不応例や頻回再発例ではシクロフォスファミド・メトトレキサート・アザチオプリンなどの免疫抑制薬の併用がおこなわれる。寛解導入後はステロイドの減量を図り、少量ステロイドでの寛解維持を目標とする。これらの薬剤による治療には、専門的な知識と経験が必要となるため、小児リウマチ専門医による治療が望ましい。血管内腔の狭窄による虚血により臓器障害を呈する場合には、血栓溶解薬・抗血小板凝集抑制薬・血管拡張薬の投与が選択される。

予後

早期に診断し血管病変が重篤化しない時期に治療を開始することで、完全寛解になる症例もあるが、治療開始が遅延すると、脳出血、消化管出血・穿孔、膵臓出血、心筋梗塞、腎不全で死亡する頻度が高くなる。小児期結節性多発血管炎は症例数が少なく、予後はあまり明らかでない。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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