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ちしがたたはつせいよくじょうへんしょうこうぐん
致死型多発性翼状片症候群Lethal multiple pterygium syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA33108]
子宮内発育遅延、胎児無動、重度の関節拘縮症につながる多関節拘縮、ならびに多関節に及ぶ翼状片(水かき)を特徴とする、まれな遺伝性の多発性翼状片症候群である。ほとんどの症例で嚢腫状リンパ管腫および/または胎児水腫を呈する。

病気・治療解説

疫学

これまでに28家系で50例弱の胎児が報告されている。うち約60%が男児、約40%が女児であった。半数の家系では男児のみが罹患しており、うち5家系では複数の男児が罹患していた。

臨床像

致死型多発性翼状片症候群(lethal multiple pterygium syndrome:LMPS)は、出生前に発症する発育不全、複数の部位(顎から胸骨、頸部、腋窩、上腕骨-尺骨、下腿、膝窩および足関節)にみられる翼状片、ならびに重度の関節拘縮症につながる屈曲拘縮が特徴である。皮下浮腫の程度は、軽度の皮膚の浮腫から、嚢腫状リンパ管腫、肺低形成、羊水過小または過多を伴う胎児水腫に至るまで様々である。顔面異常としては、眼間開離、眼瞼裂斜下、内眼角贅皮、扁平な鼻根、小さく後退した顎、小口症、低位に付着する変形した耳介および口蓋裂などがある。その他の異常には、小さな胸、筋肉量減少、停留精巣、中枢神経系の異常(特に小脳低形成、脳室拡大および多小脳回症)、皮膚隆線および皺の低形成のほか、頻度は下がるが額中央部の血管腫、腸回転異常、心低形成、横隔膜ヘルニア、閉塞性尿路疾患、揺り椅子状足底(rocker bottom feet)、小頭症、小脳および橋低形成などがある。

病因

原因となる変異が、CHRNA1(2q31.1)、CHRND(2q37.1)、CHRNG(2q37.1)がコードするアセチルコリン受容体サブユニットのほか、ネブリン遺伝子(NEB、2q23.3)およびリアノジン受容体(RYR1、19q13.2)でも同定されている。

診断方法

ルーチンの妊婦健診で認める特徴的な臨床および超音波所見に基づいて疑われる(詳細は出生前診断の項を参照)。

鑑別診断

鑑別診断として、出生前超音波検査で胎児の姿勢異常とそれに伴う胎動の減少または欠如がみられる他疾患や、関節拘縮を伴う他疾患などがある。具体的には、胎児無動変形シーケンス(fetal akinesia deformation sequence:FADS)、Bartsocas-Papas症候群、Escobar型多発性翼状片症候群、先天性多発性関節拘縮症、母体の重症筋無力症のほか、18トリソミー、重度の神経管閉鎖不全、尾部退行シーケンス(caudal regression sequence)および脊椎異常、肢体壁複合(limb body wall complex)、胎児頸部塊(fetal neck mass)、胎児低酸素、羊膜索症候群、胎児圧迫(fetal constraint)などが考えられる。

出生前診断

胎児無動は、早ければ12週目に検出できる。出生前超音波検査では、子宮内発育遅延、四肢の屈曲拘縮、多発性翼状片、嚢腫状リンパ管腫、胎児水腫、肺低形成、口蓋裂、その他の構造異常が確認されることがある。さらに頭蓋低形成の所見も認めれば、FADSを伴う他の疾患からLMPSを鑑別するのに役立つことがあり、また詳細な超音波検査および胎児MRIを行うことで、LMPSの特徴である中枢神経系異常が同定されたり、他の病因が示唆されたりすることがある。初期の検査で結論に至らず、変異が同定されている場合は、出生前の分子遺伝学的検査を施行することができる。また、妊娠中期に流産を繰り返したことのある妊婦では、LMPSを考慮すべきである。

遺伝カウンセリング

遺伝形式は常染色体潜性(劣性)である。同胞の再発リスクは25%である。X連鎖遺伝もまれに報告されており、LMPSが男児に多いことからも、この遺伝形式の存在が示唆される。

管理および治療

死に至る疾患であるため、妊娠の中絶を考慮してもよい。

予後

LMPSは典型的には妊娠中期または後期に致死となる。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Julie VOGT
日本語翻訳版の監訳
岡本 伸彦(IRUD臨床専門分科会 臨床遺伝 委員/大阪母子医療センター 研究所長)

日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Lethal_multiple_pterygium_syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA33108.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/33108

最終更新日:2019年10月
翻訳日:2022年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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