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新野 正明 先生と対談 MS(多発性硬化症 指定難病13)の専門医

第65回日本神経学会学術大会の期間中、MSの専門医である新野 正明先生のお話しを伺うことができました。

新野先生は、北海道医療センターで長年、MSの患者さんを治療し、MSに対する様々な研究を精力的に行っているドクターです。

対談は、新野先生が学会発表で発表されたPIRAの追加質問から始まり、患者さんとのコミュニケーション、他科連携、MSアプリについてお聞きしました。

PIRAについて

再発に依らない身体障害の進行(progression independent of relapse activity:PIRA)に関するお話を聞きました。

MSは、多くの患者が再発寛解型(RRMS)で始まり、そのうち何割かの方が二次性進行型(SPMS)へ移行すると考えられていました。一方、症状が悪くなる原因として、再発によって障害が残存してしまう、「再発に伴う増悪(relapse-associated worsening:RAW)」と、再発によらないPIRAが注目されるようになってきました.最近は効果の優れた疾患修飾薬によりRAWがかなり抑えられるようになってきたこともあり、PIRAの重要性が指摘されてきています。

PIRAは、脱力・歩行障害など認識されやすい症状の他、高次脳機能障害(認知機能障害)などわかりづらい症状が進行しているのが特徴で、先生は、下記のテストでも評価している。

  • ・PST(Processing Speed Test )
  • ・9‐Holes Peg Test
  • ・Timed 25-Foot Walk

これらの評価は、長期間追っての観察が必要。

また、別途時間と人員を割かなければいけない一方、診療報酬(保険点数)はないため、病院の経営を圧迫してしまうのが問題である。

患者さんとのコミュニケーションについて

今回、6年ぶりに改訂された多発性硬化症のガイドラインには、患者の声も反映されていることもあり、先生に患者さんとのコミュニケーションについてお聞きし、要点をまとめました。

  • ・医師としては、すべての「患者あるある」を聞いてMS由来のものか、そうでないのかを見極める必要がある
  • ・限られた時間の中で有効的に診察を進めるには、色々な話をすると要点がぼけてしまうので、病状や変化など要点をまとめて話すのが有効
  • ・ネットで書かれている情報はすべてが正しいとは限らないため、「これは絶対MSの症状だ」と思い込まず、惑わされないように、ネットリテラシーを身に着けて情報の取捨選択を行っていただきたい。また、医師の説明や意見も参考にしてほしい。
  • ・患者会の医療講演・相談会もWebを用いてできるようになったので、より多くの患者さん、とりわけ専門医が少ない地方に住む患者さんにも聞いていただけるチャンスがうまれ、お互いの情報共有ができるようになった
  • ・ADL(日常生活動作)を維持するために病気にとらわれず、体力・知力をつけたり、趣味を持てたりする努力をしてもらいたい。体力は体幹を鍛えたり、散歩に出たりすることが有用。認知機能に関しては、本を読んだり、ゲームをしたりすることも効果的

筆者の感想として、患者さん自身も疾患に関して勉強をしてもらえると、自身の疾患の理解に繋がり診察もスムースに進むのでは?と思いました。

他科連携について

MSの症状ではなく、長期で使用している薬剤の副作用で他の臓器などに障害が出てきた場合、また、がんなどMSの症状でない場合、他科の専門医との連携は重要である。

アプリについて

MSのアプリがいくつか出ているが、アプリの利用法などに関してお話を伺いました。

  • ・アプリは、自身の症状を記録し自身の症状がどのようなときに良くなったか、悪くなったかを理解するうえで重要
  • ・アプリの画面を見て診察するドクターがどれくらいいるかは把握していない。自分自身はまだ患者さんからアプリの結果を見せられた経験はない
  • ・診察の際、でアプリの結果を診察室内にあるモニターと接続してみせるなど、より簡単に共有できる工夫があると良い

筆者の意見として、アプリと主治医連携があると、急変時など緊急を要するときに双方とも助かると思いました。

3Hクリニカルトライアル / NPO難病ネットワーク(Nnet)
恒川信一

参照
新野 正明先生 プロフィール
 https://hokkaido-mc.hosp.go.jp/common/img/sinkeimeneki/pdf01.pdf
タブレット端末を用いた多発性硬化症患者さんの認知機能評価
 https://hokkaido-mc.hosp.go.jp/column/neurology_018.html
多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン 2023
 https://www.neurology-jp.org/files/images/20230317_01_01.pdf


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