全身性強皮症に対するB細胞除去療法の有効性、医師主導治験で証明
東京大学医学部附属病院は5月27日、全身性強皮症(強皮症)に対する多施設共同医師主導治験を行い、リツキシマブを用いたB細胞除去療法が強皮症の皮膚硬化に対して有効であることを証明したと発表しました。
この研究成果は同院皮膚科の佐藤伸一教授、吉崎歩講師、江畑慧助教らの研究グループによるもので、英科学誌「The Lancet Rheumatology」オンライン版に日本時間5月27日付で掲載されました。
強皮症は線維化病変をきたす膠原病に属する自己免疫疾患です。線維化病変とは膠原線維(コラーゲン)という細胞同士の隙間を埋め、肌の張りなどを保つタンパク質が異常に増え、皮膚や内臓などの組織が硬くなる病変のことをいいます。線維化病変は全身に生じ、特に肺に発生した線維化病変である「肺線維症」は、生命を脅かす可能性があります。その原因は不明ですが、免疫抑制薬が一定の効果を示すため、病態には免疫異常が関与していると予測されています。
今回の治験では、皮膚と肺に生じる線維化病変である「皮膚硬化」と「肺線維症」の改善を、主要評価項目、副次評価項目とし、免疫を担当するB細胞を除去するリツキシマブの効果を検証。なお、同治験は国内4施設で行われ、合計56人の強皮症患者さんが参加しました。
その結果、投与から24週後の時点において、リツキシマブはプラセボと比較して、主要評価項目として設定された皮膚硬化の指標である「修正ロドナンスキンスコア」と副次評価項目として設定された肺線維症の指標である「%努力性肺活量」を有意に改善しました。
皮膚硬化に対する有効性を証明できた薬はこれまで存在せず、今回の治験は世界で初めて皮膚硬化に対する薬効を証明したものとのこと。研究グループはプレスリリースで、「現在、リツキシマブの製造販売元から、PMDAへ承認申請が行われています。承認された後には強皮症に対する新しい治療選択肢が生まれ、福音となることが期待されます」と述べています。