筋萎縮性側索硬化症(ALS)病因タンパク質の新たな除去経路を発見、TBK1を起点とする細胞防御機構が治療標的に
名古屋大学の研究グループは10月13日、英国キングスカレッジロンドンとの国際共同研究で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の運動神経細胞で異常蓄積する病因タンパク質TDP-43を分解除去する新規経路として、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路が存在することを明らかにしたと発表しました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS、指定難病2)は、運動神経細胞が選択的に変性して細胞死に至る、根本的な治療法が確立されていない疾患です。運動神経細胞の中に「TDP-43」と呼ばれるタンパク質が異常に蓄積することが発症要因のひとつと考えられていますが、正常に分解除去されない詳細な仕組みは分かっていません。TDP-43は本来、細胞の核内に存在してRNAを調節する重要な役割を担っていますが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんでは核から失われて細胞質に異常蓄積・凝集し、運動神経細胞死を引き起こします。
今回、国際共同研究グループは、TDP-43を分解除去する新規の経路として「TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路」が存在することを明らかにしました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物のひとつであるTBK1タンパク質は、異常凝集したTDP-43と細胞内で物理的に相互作用することで活性化します。TBK1はタンパク質をリン酸化する酵素で、機能喪失型の変異は遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭型認知症の原因となることが知られています。活性化したTBK1はサイトカインである「IFNβ」を介して、病原体感染時などに誘導される特殊なタンパク質分解複合体「免疫プロテアソーム」を呼び寄せ、凝集性の高い単量体型のTDP-43を分解除去します。


一方で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者由来のTBK1変異体では十分なIFNβを正常に誘導できず、患者さんの運動神経細胞ではIFNβ受容体の発現低下が認められました。これによりTBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路の不全が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるTDP-43異常凝集のメカニズムの一端である可能性が示唆されています。
なお、同研究の成果は、国際科学誌「EMBO Reports」に10⽉5⽇付で掲載されました。
