iPS細胞とゲノム編集技術で家族性ALSの原因遺伝子変異を正常化
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、神戸大学と徳島大学の研究グループは10月9日、家族性筋萎縮性側索硬化症(家族性ALS)の原因となるSOD1遺伝子変異を一塩基単位で修正する方法を、ヒトiPS細胞を用いて検討した結果を発表しました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS、指定難病2)は、筋肉を動かす運動ニューロンが徐々に失われる難治性の神経疾患で、全体の約10%が遺伝性の家族性ALSとされています。日本では家族性ALSの約30%を「SOD1遺伝子」の変異が占めると報告されています。SOD1タンパク質は本来、細胞を酸化ストレスから守る役割を担い持ちますが、特定変異をもつと神経細胞に有害な性質を獲得します。変異型タンパク質の産生を抑える治療法の開発が進む一方、正常なタンパク質の働きまで失われる可能性が懸念されており、正常な機能を保ったまま原因変異のみを修正する治療戦略が重要とされています。
今回、研究グループは、SOD1遺伝子の2種類の変異「G93A変異」と「L126S変異」に対し、DNAを二本鎖切断せずに書き換えるゲノム編集技術を使い分けました。G93A変異には配列を指定して書き換える「プライム編集」を用い、ヒトiPS細胞で約10%の修正効率を得ました。また、L126S変異には一塩基を変換する「塩基編集」を用い、患者由来のiPS細胞で変異アレルの約26%を正常な配列へ修正しました。
ゲノム編集で課題となる目的外の編集(オフターゲット編集)の予測候補部位を解析した結果、未編集細胞の背景レベルを超える意図しない編集は検出されませんでした。今後は編集したiPS細胞から運動ニューロンを作製し、病気に関連する細胞異常が改善するかを確認するとともに、安全性の検証を進めていくとしています。
なお、同研究の成果は、国際科学誌「BMC Medical Genomics」オンライン版に9⽉30⽇付で掲載されました。
