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見過ごされてきた「女性の血友病」――正しい理解と早期発見に向けた課題とは

サノフィ株式会社は6月29日、「その生理のつらさ、普通じゃないかも―過多月経を通じて知る、女性の血友病」と題したメディアセミナーを開催しました。

同セミナーでは、東京医科大学 臨床検査医学分野 教授の天野景裕先生が登壇し、「女性の血友病」の特徴や現状について解説。さらに、関西医科大学附属病院 血液腫瘍内科 診療講師の長尾梓先生、自身も血友病保因者であり北海道ヘモフィリア友の会 理事を務める上村理絵さんを交えたトークセッションが行われ、診断の遅れや社会的な啓発の重要性などについて意見交換が行われました。

「女性の血友病はありえない」という誤解

血友病は、血液を固める働きをする「凝固因子(第VIII因子または第IX因子)」が不足または機能低下することで、出血しやすくなる疾患です。X染色体上の遺伝子変異による「X連鎖性潜性遺伝」によって起こります。X染色体を1本しか持たない男性では、X染色体上の遺伝子変異の影響を受けやすいため、血友病は男性に多くみられます。

天野先生は、出血症状のあるフランスの血友病の保因者(血友病の原因となる遺伝子変異を持つ人)の女性が、医師からも「女性に血友病なんてない」と言われ続けた事例を紹介し、「日本でも多くの医師が『女性に血友病はありえない』と思っている可能性がある」と指摘しました。

また、血友病の男児が生まれたことをきっかけに、母親が自身も保因者かもしれないと気づくケースが多い一方で、保因者は「遺伝子を持っているだけで出血症状は現れない」と誤解されがちだと説明しました。しかし近年では、保因者であっても出血症状を伴う場合があることが認識され、凝固因子活性が低い保因者は「血友病女性」、活性が50%以上でも出血症状がある場合は「症状のある保因者」と位置づけられています。

また、女性で見過ごされやすい出血性疾患としてフォン・ヴィレブランド病(VWD)についても紹介。過多月経などを「体質」と思い込み、診断されていない女性が多くいる可能性に触れ、血友病と同様、「病気と分かれば適切に対処でき、生活が楽になると思います」と早期診断の重要性を強調しました。

天野景裕先生(提供写真)

当事者の声から見えた「体質」という思い込みと、診断の壁

続くトークセッションでは、上村さんが血友病の保因者女性14名を対象に行ったアンケート結果報告「『気づけなかった』をなくすために」を発表。同報告によると、回答者の64%が「家族の診断」をきっかけに自身が保因者と判明し、判明年齢の中央値は約29歳だったといいます。また、月経の量が多い・長い、あざができやすいなどの症状があったにもかかわらず、93%が「体質だからと我慢していた」、67%が「症状があっても受診しなかった」と回答したことが共有されました。

上村さんは、保因者の母親は子どもの治療や出血対応を優先し、自分のことを後回しにしがちなことや、母や姉妹も月経量が多いと「これが普通」と考えやすいことが、診断の遅れにつながる一因である可能性があると説明しました。また、回答者14名中12名が妊娠・出産を経験し、その半数以上は保因者と知らないまま出産していたことを紹介。「保因者だと分かっていれば、出産に向けてもっとできることがあった」との当事者の声も共有し、早期診断の重要性が改めて示されました。

一方で、「診断されること自体への怖さ」も受診をためらう要因になり得ると自身の考えを述べ、「自分が保因者だと分かることや、『病気につながる自分の遺伝子が子どもに受け継がれた』と知ることへの恐怖心から、検査や受診に踏み出せない方もいるのではないか」と、心理的な側面にも言及しました。

左から天野景裕先生、上村理絵さん、長尾梓先生(提供写真)

早期発見の鍵となる「7-2-1」で啓発を

長尾先生は、「血友病は男性の病気だと、血友病の診療に携わる現場でもまだ思われがちです」と、女性の出血性疾患が見過ごされやすい背景について説明しました。

そのうえで、症状のひとつである過多月経は他人と比べる機会が少なく、母親や姉妹も月経量が多いと「体質」や「普通」と思い込み、異常に気づきにくいと指摘。あざができやすい、歯磨きの際に出血しやすいといった症状も日常的なものとして見過ごされやすく、凝固因子活性の程度によっては症状が軽く見えることもあるといいます。また、家族歴が明らかでない場合には出血性疾患が疑われず、婦人科などを受診しても診断に至らないケースも少なくないと述べました。

保因者の女性が診断を受けないまま妊娠・出産を迎える可能性にも触れ、「手術時の予期せぬ大出血を防ぐためにも、病気を早期に見つけ、事前に対策を講じることが重要です」と呼びかけました。

また、早期受診の目安として欧米でも用いられている「7-2-1」を紹介。「7日以上続く月経」「ナプキンを2時間ごとより頻繁に交換する」「100円玉大の血の塊が出る」という3つのサインを挙げ、「当てはまる場合は過多月経の可能性があります。一度、婦人科や血液内科などに相談してほしい」と訴えました。

トークセッションの最後に、天野先生は世界血友病連盟(WFH)が掲げる「Treatment for All(すべての人に治療を)」という理念に触れ、「出血症状のある女性も適切なケアにつなげることが重要であり、まずは症状のある方や医療者がその可能性を知ることが大切です」と、トークセッションを締めくくりました。

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