【米国】血友病AおよびB治療薬Qfitlia、初のアンチトロンビン低下薬としてFDAより承認を取得
仏サノフィ社は3月28日、血液凝固第VIII因子または第IX因子に対するインヒビター(阻害因子)を保有する、あるいは保有しない成人および12歳以上の小児の血友病Aおよび血友病B患者さんを対象とした、初のアンチトロンビン(AT)低下薬「Qfitlia(一般名:fitusiran)」が、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されたと発表しました。
血友病AおよびBは、まれな遺伝性の血液疾患であり、血液が正常に凝固する機能が損なわれるため、過剰な出血や関節内への自然出血などが起こりやすく、関節の損傷や慢性的な痛みを引き起こし、患者さんの生活の質(QOL)を低下させる可能性があります。血友病Aは血液凝固に必要な第VIII因子、血友病Bは第IX因子の欠乏によって発症します。これらの凝固因子が不足すると、血液凝固の最終段階に必要なトロンビンが十分に生成されず、止血機能が正常に働きません。特に、凝固因子製剤による治療を受けている患者さんの中には、治療薬に対するインヒビターと呼ばれる抗体が産生されることがあり、その場合、治療がより困難になることが知られています。
Qfitliaは、血液凝固を抑制するタンパク質であるアンチトロンビンの濃度を低下させることで、血友病患者さんの体内でトロンビンの生成を促進し、止血のバランスを調整する薬剤です。siRNA(small-interfering RNA)と呼ばれる技術を用いて開発されており、少ない量を低頻度で皮下投与できる製剤です。
今回の承認は、インヒビターを保有する患者さんと保有しない患者さん双方を対象とした第III相臨床試験(ATLAS試験)のデータに基づいたものです。この試験では、年間出血率(ABR)による評価において、Qfitliaを定期投与した患者群で臨床的に意義のある改善が認められました。具体的には、インヒビター非保有の患者さんでは、Qfitliaの定期投与群は、必要な時に凝固因子製剤を投与するオンデマンド投与群と比較して、ABRが71%減少しました(ABRの推定平均値:9.0回/年 vs 31.4回/年、p<0.0001)。また、インヒビター保有の患者さんにおいては、Qfitliaの定期投与群は、バイパス止血製剤のオンデマンド投与群と比較してABRが73%減少しました(ABRの推定平均値:5.1回/年 vs 19.1回/年、p=0.0006)。非盲検延長試験におけるABRの中央値は、インヒビター非保有例で3.8回/年(四分位範囲(IQR): 0.0–11.2)、インヒビター保有例で1.9回/年(IQR: 0.0–5.6)でした。年間自然出血率(AsBR)の中央値は、インヒビター非保有例で1.9回/年(IQR: 0.0-7.5)、インヒビター保有例で1.9回/年(IQR: 0.0-3.7)でした。非盲検延長試験に参加した患者さんの約半数で、出血回数が1回以下(31%が0回、47%が0~1回)でした。
サノフィ 社エグゼクティブ・バイスプレジデント スペシャルティケア ヘッドのブライアン・フォード氏はプレスリリースにて、「今回の承認は、希少血液疾患コミュニティのためにイノベーションの推進とケアの向上を目指す当社の取り組みの成果の一つです。Qfitlia は、簡便な投与法と低い投与頻度で効果的に出血を抑制できる製剤として、血友病治療に革新をもたらす可能性があります。当社の血友病治療のポートフォリオはますます充実しつつあり、個々の患者さんのニーズを最適な形で応える、治療の負担の少ない出血抑制薬をお届けできるよう注力しています」と述べています。
また、ロサンゼルス小児病院 止血血栓センター所長のガイ・ヤング氏は、「Qfitlia は、血友病に対する出血抑制療法剤のなかで最も投与頻度が低い製剤であり、その独自の機序により、インヒビター保有例や血友病 B などのアンメットメディカルニーズがいまだ大きい患者さんを含むあらゆる患者さんに使用いただけます。アンチトロンビンは FDA が承認した血液検査で信頼性の高い測定が可能な生体内物質であり、Qfitilia はこのアンチトロンビンを標的とすることで止血バランスを調節し、出血率の低下や出血抑制効果の向上に役立ちます」と述べています。