内在性HHV-6Bが全身性エリテマトーデス(SLE)の発症や疾患の活性化に影響
大阪大学と理化学研究所の共同研究グループは1月3日、全身性エリテマトーデス(SLE)など5つの自己免疫疾患およびCOVID-19と、内在性HHV-6およびアネロウイルス感染の関連を調べた結果、内在性HHV-6Bが全身性エリテマトーデス(SLE)の発症や疾患の活性化に大きな影響を及ぼすことを発見したと発表しました。また、内在性HHV-6B陽性全身性エリテマトーデス(SLE)患者さんでは、特有の免疫応答が引き起こされることを明らかにしました。
今回、共同研究グループは、5つの自己免疫疾患とCOVID-19および健常対照群の全ゲノムシーケンスデータを用いて、内在性HHV-6を同定し、各疾患との統計的関連を調べました。さらに、ファージ免疫沈降シーケンス(PhIP-seq)やシングルセルRNAシーケンス(RNA-seq)を用いて内在性HHV-6B陽性の全身性エリテマトーデス(SLE)患者さんと、陰性の患者さんの免疫応答の違いの解明を目指しました。
その結果、全身性エリテマトーデス(SLE)や肺胞蛋白症(PAP)の患者さんでは、健常人に比べて内在性HHV-6B陽性例が多く、内在性HHV-6Bが、全身性エリテマトーデス(SLE)や肺胞蛋白症(PAP)の遺伝的リスク因子であることが明らかになりました。また、内在性HHV-6Bをもつ全身性エリテマトーデス(SLE)患者さんでは特徴的な免疫応答が認められることを発見しました。
次に、全ゲノムシーケンスデータからアネロウイルス(80%以上の成人に潜伏感染していると考えられるウイルス)感染を定量化し、各疾患との関連を解析しました。その結果、軽度のアネロウイルス感染や重度のアネロウイルス血症の割合は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、COVID-19で健常群に比べて有意に高く、尋常性乾癬にも高い傾向が認められました。さらに、全身性エリテマトーデス(SLE)では免疫抑制剤やステロイドの使用があると、アネロウイルス陽性の割合が高くなることを見出しました。
以上の研究成果より、内在性HHV-6Bやアネロウイルス感染と自己免疫疾患などの免疫関連疾患の関連が明らかになりました。その中でも、全身性エリテマトーデス(SLE)の発症や疾患の活性化に、内在性HHV-6Bが大きな影響を与えることがわかりました。これらの結果は、免疫関連疾患の発症予防や個々の患者さんに合わせた医療の質を高めることに貢献することが期待されるといいます。
なお、同研究の成果は、「Nature Genetics」オンライン版に1月3日付で掲載されました。