【米国】他家iPS細胞由来網膜シート(立体網膜)を用いた網膜色素変性治療に関する1/2試験のINDを申請
住友ファーマ株式会社は11月29日、他家iPS細胞由来網膜シート(立体網膜、開発コード:DSP-3077)を用いた網膜色素変性治療に関するフェーズ1/2試験のIND申請(Investigational New Drug Application、米国における治験届け)を2024年10月25日に米国食品医薬品局(FDA)に対して行い、FDAによる30日調査が完了し、同治験を開始する準備が整ったと発表しました。なお、本治験では、非凍結の立体組織を用います。
網膜色素変性症(指定難病90)は、網膜を構成する細胞のうち、光受容体である視細胞やその機能維持・保護をする網膜色素上皮細胞が広範に変性する遺伝性の疾患です。光覚に関わる杆体視細胞が先行して変性し、続いて視力・色覚に関わる錐体視細胞が変性します。原因遺伝子の種類も多様で症状の個人差が大きく、長期間の進行の後には、高度な視機能低下をきたすことが多い疾患です。
住友ファーマは現在、同治験の開始に向け、米国マサチューセッツ州ボストンのマサチューセッツ眼科耳鼻科病院(Massachusetts Eye and Ear: MEE)と協議を進めており、2025年度での患者さんへの移植開始を目指しています。すでに網膜色素変性を対象に最適な眼科評価項目の探索を目的とした自然観察研究をMEEにて開始しており(NCT06517940)、得られたデータを今回の治験および今後の臨床開発に活用する予定です。
また2020年には、世界初の臨床研究「網膜色素変性に対する同種iPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」が神戸市立神戸アイセンター病院にて開始されました。その際に、住友ファーマが提供した他家iPS細胞由来網膜シートが2名の患者さんに移植されています。移植後2年間の網膜シートの生着および安全性が確認されていることが、神戸市立神戸アイセンター病院より公表されていますが、今回の治験はこの臨床研究とは別途実施するものです。
住友ファーマはプレスリリースにて、「本治療で用いる技術は、国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)の笹井芳樹博士の研究グループが見出した多能性幹細胞から立体構造をもつ神経組織を効率良く分化させる方法である自己組織化培養法(SFEBq 法)を基にしています。理研との2010年から2014年までの共同研究にて本製法の改良を進め、その成果の実用化を目指して当社が住友化学より引き継ぐ形で、2013年より理研との共同研究を実施し、製法を確立しました。現在、理研との共同研究は終了し、当社単独で本技術のさらなる改良、さらに適応拡大を目指した基盤研究も進めています」と述べています。