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ファンコニ貧血の病態に関与する遺伝子を特定

京都大学らの研究グループは、造血幹細胞におけるゲノムの不安定化を促進する因子を発見しました。小児からみられる遺伝病であるファンコニ貧血 (指定難病 285) はDNAの損傷に対し非常に修復機能が弱いことが知られており、染色体が切れやすくがんの原因にもなり得る特徴を持ちます。本研究で着目されたSLFN11タンパク質はゲノムの分解に関係していることが明らかになり、将来的にファンコニ貧血やがんの治療法にも繋がると期待されています。

「ファンコニ貧血」DNAが損傷しやすくなる遺伝性疾患

近年の研究よりSLFN11タンパク質をもたないがん細胞は治療に対し抵抗性を持つため生き残ることが明らかになりました。また、大規模なデータベース解析により、SLFN11タンパク質の発現量と、DNAを障害する抗がん剤の感受性に相関性があることも報告されています。研究グループはSLDN11遺伝子が造血幹細胞で多く発現していることを発見しました。再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、白血病の原因になり得る難病の「ファンコニ貧血」は、DNAに生じるダメージや損傷をうまく修復できないために、造血幹細胞が徐々に減少していきます。ファンコニ貧血はDNA損傷の種類のうち、クロスリンク損傷と呼ばれる種類のDNA損傷を修復できません。抗がん剤であるシスプラチンはDNAにクロスリンク損傷を引き起こし細胞死を誘導します。本研究ではファンコニ貧血細胞のSLFN11遺伝子の発現をなくすことで、シスプラチンなどの抗がん剤に対し抵抗性を持つか同化を検討しました。

「SLFN11遺伝子」ファンコニ貧血のDNA損傷に関与

研究グループはまずファンコニ貧血の患者由来のPD20細胞を作成しました。PD20細胞に対しSLFN11遺伝子の働きを低下させたところ、シスプラチン投与後の生存率が上昇しました。さらに、研究室で保有していたHAP1細胞がSLFN11遺伝子を高発現していることが観察されました。そこで遺伝子改変技術を用いてSLFN11遺伝子を破壊したところ、PD20細胞と同様に生存率が上昇しました。また、SLFN11遺伝子の機能を破壊した細胞では、抗がん剤に対する反応が変化しただけでなく、ファンコニ貧血に特徴的にみられる染色体の断裂なども改善されていました。DNA損傷後のゲノムの状態を1分子レベルで観察したところ、DNA損傷部近傍で見られるはずのDNA分解が起こらなくなっていました。これは、SLFN11がDNAのゲノム分解を促進する機能を持つことを示しています。

出典元
京都大学 研究成果

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