多発性硬化症の動物モデルEAE発症マウスにおいて、インターフェロンγの刺激がTregの分化を制御していることが明らかに
大阪大学の研究グループは11月19日、多発性硬化症の動物モデルであるEAE発症マウスにおいて、Th1-Tregが病変部に集積することで病気の悪化を抑えていることを明らかにしたと発表しました。
多発性硬化症(指定難病13)は、脳や脊髄、視神経などに病巣が繰り返し起こる疾患で、再発と寛解を繰り返します。発病の原因ははっきりと分かっていませんが、30歳前後での発病率が高く、そのうち約7割が女性です。再発と寛解を繰り返します。現在、症状の再発、悪化を抑えるために、免疫抑制剤等を投薬する対症療法が取られますが、根本治療法は確立されていません。
EAE発症マウスは研究用の動物モデルとして長く使用されていますが、実際の病気とは異なる点があります。また、EAEの病態形成には多くの免疫細胞が関与しており、免疫抑制機能を持つTregは病態の進行を抑える細胞です。自己免疫疾患が発症した場合に、Treg のサブセットであるTh1-Tregが病態にどのように関与するかは、まだ十分に解明されていませんでした。
今回、研究グループは、シングルセルRNA解析という手法により、EAE脳内において、主にT細胞から分泌されるIFN-γがTregのTh1-Tregへの分化を誘導すること、Th1-Tregが炎症を抑制し、EAEの増悪化を防いでいることを見出しました。
この研究成果により、Th1-Tregを標的とした新たな免疫療法の開発が期待されます。また、ヒトの多発性硬化症(ヒト)におけるIFN-γの役割が、動物モデルであるEAEとは異なることが知られていますが、今回動物モデルにおけるIFN-γの新たな機能を明らかにしたことで、その乖離を理解し、多発性硬化症におけるIFN-γの正確な機能の解明、より効果的な治療法や脳内のTh1-Tregを測定することによる新規病態検査法等の開発が期待されるといいます。
なお、同研究の成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」オンライン版に11月19日付で掲載されました。