パーキンソン病などのシヌクレイノパチーの発症機序を解明
熊本大学の研究グループは10月21日、シヌクレイノパチーの発症機序を新たに解明したと発表しました。
シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(指定難病6)、やレビー小体型認知症を含む進行性の神経変性疾患の総称です。高齢化に伴い、神経変性疾患の患者さんは増加傾向にあり、その対策は課題となっています。シヌクレイノパチーやタウオパチー(アルツハイマー病など)は、脳内に異常なタンパク質が凝集・蓄積・細胞間伝播することで神経細胞の機能低下を引き起こし、認知障害や運動障害などの症状を呈します。シヌクレイノパチーでは、「αシヌクレイン」と呼ばれるタンパク質が細胞内に凝集し、神経障害を引き起こしますが、その凝集機序は不明でした。
今回、研究グループは、αシヌクレインを細胞内で凝集する分子の同定に成功しました。それは、「G4」と呼ばれるRNA高次構造でした。G4は、細胞にストレスが付加されると増加・集積しますが、「G4の集積」はαシヌクレインを凝集させる足場となることがわかりました。
パーキンソン病患者さんの剖検脳において、αシヌクレイン凝集体の約90%にG4が集積していることが判明。また、G4を人為的にマウス脳内の神経細胞に集積させたところ、細胞内のαシヌクレインがG4の集積を足場として凝集し、神経変性と運動機能障害が発生しました。
さらに、同研究グループが見出したG4の集積を抑制する薬剤「5-アミノレブリン酸」をシヌクレイノパチーモデルマウスに経口投与したところ、αシヌクレインの凝集が阻害され、進行性の運動機能の低下が予防できました。
以上の研究成果より、αシヌクレインを細胞内で凝集する分子が「G4」であることを初めて同定し、「G4の集積抑制」によってシヌクレイノパチーの発症を予防できることを証明しました。G4の集積を抑制することは、神経変性疾患全般の「未病」に向けた創薬につながるといいます。
同研究の成果は、「セル(Cell)」オンライン版に10月18日付で掲載されました。