1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. 小児神経難病の新たな疾患メカニズムを解明、新たな治療法開発に繋がる可能性

小児神経難病の新たな疾患メカニズムを解明、新たな治療法開発に繋がる可能性

名古屋市立大学は8月6日、これまで診断が難しかった神経難病の疾患において、遺伝子解析と3次元培養モデルを組み合わせることで、新たな疾患メカニズムとその治療法開発の可能性を示したと発表しました。

この成果は、同大、名古屋大学、東京大学、広島大学と熊本大学の研究グループと、慶應義塾大学、九州大学、理化学研究所、横浜市立大学、自治医科大学、宮城県立こども病院、英University College Londonらとの共同研究によるものです。

小児の難病は、診断が難しい場合が多く、患者さんの全遺伝子解析を行っても、原因と考えられる遺伝子変異の発見は難しく、どの遺伝子が本当に重要なのか、脳にどのような影響を及ぼしているのかを解明するのは困難です。

今回、研究グループは、診断が難しかった発達性・変性てんかん性運動障害性脳症を伴う患者さんの遺伝子を解析して、iPS細胞から作成した3次元脳培養モデル(脳オルガノイドモデル)を利用して、責任遺伝子と疾患メカニズムを解明しました。

その結果、PNPLA8遺伝子が、「発達性・変性てんかん性運動障害性脳症(DDEDEと命名)」の責任遺伝子であることを明らかにしました。発達性・変性てんかん性運動障害性脳症は、PNPLA8遺伝子の機能喪失の程度により軽症型から重症型へと変化し、重症型では、脳のしわができず小頭症となることを明らかにしました。継承型では、歩行困難などの症状を示すことを明らかにしました。

PNPLA8を欠損したiPS細胞と患者由来のiPS細胞から脳オルガノイドを作成した結果、外側放射状グリアと呼ばれるヒト特異的神経幹細胞の数が減少し、神経産生が減少していることが明らかになりました。これらの結果は、患者さんの脳のしわの形成や小頭症の症状を引き起こす原因である可能性を示唆します。

また、大規模遺伝子解析(光単離化学法)と大規模脂質解析(リピドミクス解析)を行い、リン脂質代謝の異常が神経産生へ影響を及ぼしている可能性を明らかにしました。さらに、欠乏していたリン脂質を補うことにより、外側放射状グリアの数が回復できることを明らかにしました。

以上の研究成果より、これまで診断が難しかった神経難病において、遺伝子解析と3次元培養モデルを組み合わせることで、新たな疾患メカニズムとその治療法開発の可能性に繋がることが期待されるといいます。

名古屋市立大学はプレスリリースにて、「今後は、さらなるメカニズムを明らかにし、様々な動物モデルと組み合わせることで、新たな治療法開発へと結びつけます」と述べています。

なお、同研究の成果は、英科学誌「Brain」オンライン版に7月31日付で掲載されました。

出典
名古屋市立大学 プレスリリース

関連記事