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レビー小体病の発症前および発症後の段階におけるアルツハイマー病の合併を血液を用いて解析

名古屋大学の研究グループは8月1日、国立長寿医療研究センターおよび量子科学技術研究開発機構との共同研究により、神経変性疾患のひとつであるレビー小体病の発症前および発症後の段階におけるアルツハイマー病の合併を、患者さんと予備群の血液バイオマーカーを用いて解析したと発表しました。

レビー小体病は、α-シヌクレインの神経細胞内蓄積を病理学的特徴とする神経変性疾患であり、パーキンソン病とレビー小体型認知症を含む疾患概念です。パーキンソン病(指定難病6)は、手足の震えや筋固縮などの症状が現れる疾患です。高齢者に多くみられる疾患ですが、若い人でも発症することがあります。レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで頻度の高い認知症であり、幻視などの認知機能障害とパーキンソン病に似た症状が現れます。

近年、レビー小体病ではαシヌクレインに加え、併存するアルツハイマー病理(アミロイドβとタウの蓄積)が認知症の出現や進行に関与することが剖検脳を用いた研究で報告されていました。しかし、こうしたアルツハイマー病の変化がいつごろから出現するのかは明らかではありませんでした。

今回、研究グループは、パーキンソン病患者さん84名、レビー小体型認知症患者さん16名に加え、ハイリスク者(予備軍)82名、ローリスク者(健康な方)37名を対象に、血液中のアルツハイマー病のバイオマーカー(アミロイドβ、リン酸化タウ181)と神経変性マーカー(ニューロフィラメント軽鎖)を測定しました。

その結果、パーキンソン病患者さんとレビー小体型認知症患者さんは、ローリスク者と比較して、アルツハイマー病関連バイオマーカーであるアミロイドβ(Aβcomposite)やリン酸化タウ181(p-tau181)の上昇がみられた一方で、ハイリスク者ではアルツハイマー病関連バイオマーカーの上昇はみられませんでした。また、パーキンソン病患者さん、レビー小体型認知症患者さん、ハイリスク者においては、神経変性マーカーであるニューロフィラメント軽鎖(NfL)が上昇していることがわかりました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、パーキンソン病やレビー小体型認知症の併存アルツハイマー病理は発症前の段階では見られず、発症後の段階になってから出現し始めることが示唆されました。また、ハイリスク者では、アルツハイマー病関連バイオマーカーの上昇がないにも関わらず、神経変性マーカーであるニューロフィラメント軽鎖(NfL)の上昇が認められたことから、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)を用いることでα-シヌクレインによる神経障害を発症前の段階から検出できる可能性が示されました。

名古屋大学はプレスリリースにて、「現在、本研究グループではレビー小体病ハイリスク者の1年毎の評価を継続しています。レビー小体病の併存アルツハイマー病理がいつから出現し、神経機能の予後にどのような影響を与えるのか、レビー小体病患者およびハイリスク者を縦断的に追跡し評価することでさらに明らかにしていきたいと考えています」と述べています。

なお、同研究の成果は、米科学雑誌「npj Parkinson’s Disease」に7月31日付で掲載されました。

出典
名古屋大学 プレスリリース

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