筋萎縮性側索硬化症と前頭側頭型認知症の原因となるメカニズムを発見
近畿大学は7月19日、神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭型認知症(FTD)の原因となる異常なポリペプチドの合成を、FUSというタンパク質が制御することを発見し、さらに、FUSを含む一群のタンパク質がALSやFTDに対して治療効果をもたらすことを、疾患モデルショウジョウバエを用いて明らかにしたと発表しました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足・のど・舌などの筋肉が徐々に低下していく神経疾患であり、前頭側頭型認知症(FTD)は、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の次に多い、変性性認知症です。これらの疾患は、まだ十分な原因解明に至っておらず、根本的な治療法は開発されていません。
近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の最も多い遺伝的な要因として、通常よりもDNA6塩基の繰り返し配列が異常に長く連なっているC9orf72という遺伝子の変異が報告されています。そして、この異常に長いDNAの配列は、転写され異常なリピートRNAとなり、異常なポリペプチドに翻訳され、神経細胞の機能障害や細胞死の原因になると考えられています。
今回の研究では、異常なポリペプチドを合成する翻訳機構を制御することが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の治療に有効なのではないかと考え、検証を行いました。また、異常なポリペプチドを合成する遺伝子をショウジョウバエに導入し、神経変性を起こす筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)のモデルショウジョウバエを作成し、異常なリピートRNAに結合するタンパク質に着目して、神経変性への影響をスクリーニングしました。
その結果、FUSというタンパク質が、異常なポリペプチドの量を減少させ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)/前頭側頭型認知症(FTD)モデルショウジョウバエの神経変性を抑制することが明らかになりました。
今回の研究成果により、異常なリピートRNAに結合して、異常なポリペプチドの合成を減少させる分子による、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の新たな治療法開発への期待ができます。
なお、同研究は、大阪大学、京都府立医科大学、東京工業大学との共同研究であり、論文は、生物学領域の国際的な学術誌「eLife(イーライフ)」オンライン版に7月18日付で掲載されました。