難治性の皮膚潰瘍疾患を対象とした血小板創造再生医療プロジェクト
慶應義塾大学は2020年6月11日、「難治性皮膚潰瘍を対象とした間葉系幹細胞由来血小板様細胞の探索的臨床試験」について、厚生科学審議会において第1種再生医療等提供計画の再生医療等提供基準への適合が得られたことを発表しました。
多くの難治性の皮膚潰瘍は、動脈や静脈といった血管内で血の巡りが悪くなる循環障害がみられます。さらにこうした疾患の多くは治療に長い時間がかかり、また、治療を行っても症状が再発することもあります。潰瘍が起きた箇所は感染症にもかかりやすく注意が必要です。このような治療の難しさから、難治性皮膚潰瘍により年間1万人以上の方が脚を切断しなければなりません。1日も早い治療法の開発が待たれています。
間葉系幹細胞由来血小板様細胞(ASCL-PLC)は、皮下脂肪に存在する間葉系の幹細胞から作成された慶応義塾大学の開発品です。これまでの研究により、ASCL-PLCは末梢血血小板の特性を持つことに加え難治性皮膚潰瘍にも有効性がありそうなことがわかってきました。さらに遺伝子の導入が不要である、大量に安定して製造可能である、潰瘍部位に塗布可能であるといたメリットがあります。
本研究では、適格性が確認されたドナーより摘出された脂肪組織を用いてASCL-PLCを作成し難治性皮膚潰瘍患者さんへ塗布されます。主要な目的はその安全性の確認であり、副次的な目的として有効性が確認されます。本研究は世界に先駆けて行われるため、まずは患者さんの安全への配慮が優先されます。