全身性エリテマトーデスの発症に皮膚細菌叢が関与か
東北大学は11月14日、皮膚細菌叢に対する表皮細胞の応答不良を原因とする黄色ブドウ球菌の皮膚生着数の増加が、自己免疫疾患の1種である全身性エリテマトーデスの発症に関わっていると発表しました。
この成果は、同大大学院医学系研究科の皮膚科学分野の照井仁助教、山﨑研志臨床教授、浅野善英教授と相場節也名誉教授と医学系研究科免疫学分野石井直人教授、河部剛史准教授、医工学研究科阿部高明教授、国立がん研究センター先端医療開発センタートランスレーショナルインフォマティクス分野山下理宇ユニット長ら共同研究グループによるもので、「Science Immunology誌」オンライン版に10月28日付で掲載されました。
自己免疫疾患は、免疫の異常によって自分自身の免疫が全身の臓器などを攻撃する慢性炎症性疾患です。自己免疫疾患の一つである全身性エリテマトーデスでは、全身のさまざまな臓器に炎症や障害が起こり、発熱、全身倦怠感などの全身症状、関節痛、皮疹、光線過敏症、脱毛、口内炎などの症状が現れます。
今回、共同研究グループは、自己免疫疾患を自然に発症する遺伝子改変マウス用いた研究を行った結果、マウスの皮膚細菌叢のバランスが破綻しており、なかでも黄色ブドウ球菌の数が増えていたことが明らかになりました。
遺伝子改変マウスでは、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制する抵抗力が低く、全身性エリテマトーデスに特徴的な自己抗体が産生されていることや、腎障害をきたすなどの現象が認められたそうです。また、これらの現象が、抗菌薬の全身投与により抑制され、黄色ブドウ球菌の皮膚への塗布により悪化することが判明。これにより、皮膚細菌叢のバランスの崩れと全身性エリテマトーデスの症状悪化に関連性があることが明らかになったといいます。
また、黄色ブドウ球菌の皮膚に対する影響を検討した結果、皮膚塗布によって皮膚に存在する好中球が活性化し、好中球細胞外トラップが形成されていることが判明。好中球の活性化に連動して樹状細胞とT細胞が活性化し、インターロイキン23(IL-23)やインターロイキン17A(IL-17A)を放出し、全身性エリテマトーデスの症状を形成しているといいます。また、IL-23やIL-17Aの働きを止める抗体を用いることで、これらの症状が抑制されることも明らかになったそうです。
今回の研究成果により、皮膚細菌叢に対する抵抗力の低下と、全身性エリテマトーデス発症の関連性が明らかになりました。研究グループはプレスリリースにて、「本研究は、自自己免疫疾患に皮膚細菌叢が関わることを明らかにし、さらにはインターロイキン23やインターロイキン17Aが全身性エリテマトーデスの治療ターゲットになることを示唆する重要な報告です」と述べています。