福山型筋ジストロフィーに合併する心筋症発症のしくみを解明
岡山大学は2019年12月17日、筋ジストロフィーに合併する心筋症発症のしくみを解明し、心機能を改善する新しい治療薬候補を開発したと発表しました。
この研究成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)の片野坂友紀講師と同大客員研究員の氏原嘉洋博士(当時・川崎医科大学講師;現・名古屋工業大学准教授)、神戸大学大学院医学研究科の金川基講師および川崎医科大学の共同研究グループによるものです。
筋ジストロフィー症は、全身の筋力低下、吸器障害、心筋障害などさまざまな機能障害や合併症を伴う重篤な疾患です。そのなかでも、心筋症は重篤な疾患であり、心移植以外に有効な治療法がありません。心筋症で低下した心機能を改善することで、患者さんの生活の質(QOL)の改善や生存期間の延長が期待できます。
今回、研究グループは福山型筋ジストロフィー症の原因遺伝子「フクチン」を欠損させた疾患モデルマウスを世界で初めて作成。重篤な心不全を生じることや微小管の過重合がその原因となっていること、コルヒチンによってマウスの寿命を延ばせることなどを解明しました。
今回の成果について、研究グループはプレスリリースで「筋ジストロフィー症に苦しむ数多くの人を救う新たな治療方法を提案するだけではなく、広く心不全や骨格筋病態を対象とした治療研究に対しても、重要な起点となることが期待されます」と述べています。
福山型先天性筋ジストロフィー症とは
福山型先天性筋ジストロフィー症は、小児期の筋ジストロフィーの中では日本で2番目に多い疾患で、糖鎖付加酵素フクチンを原因遺伝子としますが、未だ病態には不明な点が多く根本的な治療法はありません。
微小管とは
微小管は主要な細胞骨格の1つで、チューブリンというタンパク質を構成単位とする線維状の構造物です。重合と脱重合を繰り返し、細胞の形態維持や変化、細胞分裂、細胞内輸送など、さまざまな重要な役割を担っています。
コルヒチンとは
微小管の重合阻害薬であるコルヒチンは、痛風発作の緩解や予防、家族性地中海熱の治療薬としても使われています。
出典元
岡山大学 プレスリリース