胆道閉鎖症に対する腹腔鏡下葛西術は開腹手術と同等の長期生存期間を示す
名古屋大学は12月2日、鹿児島大学、香港大学外科学講座、順天堂大学との共同研究グループが、胆道閉鎖症に対する腹腔鏡下葛西術の中長期成績が、従来の開腹術と同等であることを明らかにしたと発表しました。
胆道閉鎖症(指定難病296)は、胆管が閉塞することによって進行性の肝硬変や肝不全を引き起こす疾患です。この病気の主要な治療法のひとつに、閉塞した胆管を処理する葛西術(かさいじゅつ)があります。葛西術には、従来から行われている開腹葛西術と、より低侵襲な腹腔鏡を用いた腹腔鏡下葛西術があります。

今回の研究では、2000年1月~2022年12月までの22年間に国際的な小児外科施設の356名の胆道閉鎖症患者さんを対象に、腹腔鏡下葛西術と開腹葛西術の長期的な自己肝生存率への影響を評価しました。その結果、術後5年時点での自己肝平均生存期間は、両手術群で同等であることが示されています。具体的な平均自己肝生存期間は、開腹群が40.0か月であったのに対し、腹腔鏡群は44.7か月であり、統計的に大きな差は見られませんでした(P = 0.23)。この結果は、腹腔鏡下葛西術が、短期的な利点だけでなく、中・長期的に見ても有用な選択肢であることを裏付けています。

さらに、同研究では、術後に投与されたステロイド量が多いほど、肝移植の施行と関連することが示されました。ステロイド投与量(プレドニゾロン換算 90mg/kg)を基準に自己肝生存曲線を表したところ、高用量群では、生存期間の短縮が明らかになりました。

以上の研究成果より、腹腔鏡下葛西術が、患者さんの負担を軽減しつつ、開腹手術と同等の長期的な予後をもたらす有効な治療法であることが確認されました。また、自己肝の生存期間を延長することを目的とした過剰なステロイド投与については、その効果を再考すべきであるとしています。
なお、同研究の成果は、「Hepatobiliary Surgery and Nutrition」オンライン版に11月24日付で掲載されました。
