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RFFL標的アンチセンス核酸の開発に成功、嚢胞性線維症の治療につながる可能性

関西学院大学は11月14日、遺伝性の難病である嚢胞性線維症の治療に新たな可能性をもたらす核酸物質の開発に成功したと発表しました。

画像はリリースより

嚢胞性線維症(指定難病299、CF)は、主にCFTRという遺伝子の変異により引き起こされる遺伝性疾患です。日本では出生約60万人に1人という稀な病気ですが、欧米では出生約3,000人に1人が発症する頻度の高い病気として知られています。

この病気は、気道や消化管などで粘液の粘性が異常に高まり、慢性の呼吸器感染や膵機能不全などを引き起こします。嚢胞性線維症(CF)の原因であるCFTRタンパク質変異体は、ユビキチンリガーゼと呼ばれる酵素の一種であるRFFL(Ring Finger and FYVE-like domain containing E3 ubiquitin protein Ligase)によって、細胞膜への発現が抑制され、分解が促進されてしまいます。RFFLは、CFの既存の治療薬であるCFTRモジュレーターの効果を妨げる因子であるため、RFFLを抑制することが新たな治療戦略として注目されていました。

今回、研究グループは、このユビキチンリガーゼ RFFLを標的とするアンチセンス核酸(ASO)という物質を、独自に構築したアルゴリズムと人工核酸技術を駆使して開発しました。ASOとは、標的遺伝子の発現を抑制する役割を持つ短鎖の一本鎖核酸分子(核酸医薬の一種)です。開発されたASOは、肝臓などへの毒性が低く、生体内での安定性が高いことが確認されています。また、投与後最大で2週間にわたり、標的であるRFFL遺伝子の発現抑制効果を維持することが示されました。

嚢胞性線維症(CF)患者由来の気道上皮細胞を用いた実験では、このASOがCFTR変異体の細胞内分解を抑制し、細胞膜上への機能的発現を促進することにより、CFTRモジュレーターの治療効果を増強させることが示されました。

さらに重要な点として、このASOは、一般的なCFTR変異体だけでなく、複数の希少変異体に対しても有効性を示しました。これにより、従来の治療法では効果が得られにくい患者さんへの新たな核酸医薬の創出につながることが期待されています。加えて、一部の症例では、このASO単独での投与でも、モジュレーター治療と同等の効果を発揮したとされています。

以上の研究成果より、治療の有効性を高めるだけでなく、新たな核酸医薬の創出にもつながることが期待されます。

なお、同研究の成果は、国際学術雑誌「Molecular Therapy-Nucleic Acids」に10月31日付で掲載されました。

出典
関西学院大学 プレスリリース

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