IgA腎症の新薬候補メザギタマブ、腎機能への長期的な安定化データが発表
武田薬品工業株式会社は11月8日、原発性IgA腎症を対象とした抗CD38モノクローナル抗体メザギタマブ(遺伝子組換え)(TAK-079)の皮下投与における第1b相臨床試験の新たな中間データを発表しました。
IgA腎症(指定難病66)は、10歳から30歳の若年層に多く診断される、生涯にわたって進行する自己免疫疾患で、腎機能に不可逆的な障害を引き起こします。既存の治療法では、約5人に1人の患者さんが診断から10年以内に腎不全を発症する可能性があるほど、予後が不良な疾患です。
メザギタマブは、病因に関わるガラクトース欠損型(Gd-)IgA1と呼ばれる異常タンパク質を産生する細胞を減少させることで、IgA腎症の病態進行の上流過程を標的とする、疾患修飾作用が期待される薬剤です。同剤は、CD38を高発現する細胞を減少させることにより、免疫複合体の形成を抑制し、炎症を軽減させることで、長期的な腎機能の安定化が期待されています。
同試験では、メザギタマブの投与を受けた参加者の腎機能(eGFR)が、最終投与から最大18カ月後の96週時点まで安定していることが示唆されました。参加者の蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比:UPCRで測定)の平均減少率は55.2%を維持し、Gd-IgA1も96週時点で50.1%の持続的な減少が認められました。安全性については、同本試験においてメザギタマブの忍容性は概ね良好であり、96週時点までに重篤な有害事象や日和見感染は報告されず、新たな安全性上の懸念は確認されませんでした。
第1b相臨床試験の治験責任医師であり発表者であるJonathan Barratt教授はプレスリリースにて、「メザギタマブはIgA腎症の根底にある免疫メカニズムを標的としており、今回、メザギタマブ最終投与後も参加者の腎機能が安定していたことを示すデータが得られました。IgA腎症は進行性であり、しかも多くの場合は自覚症状がないため、診断時にはすでに何らかの腎障害を有している患者さんが多いことから、今回得られた所見は非常に重要です。効果的な介入を行わなければ、腎不全に至り、透析または移植が必要となるリスクは依然として驚くほど高いままです」と述べています。
また、武田薬品工業のVice PresidentでありFranchise Global Program LeaderであるObi Umeh、M.D.、M.Sc.は、「これらの有望なデータは、根本原因を標的とするメザギタマブがIgA腎症のような自己免疫疾患の治療法を再定義する可能性があるという私たちの信念を裏付けるものです。現在、IgA腎症および免疫性血小板減少症を対象にメザギタマブを評価する第3相臨床試験では、参加者の登録が進行中です。私たちは、このような有望なプログラムを前進させることができることを大変嬉しく思います。依然として高いアンメット・ニーズを抱える患者さんに革新的な解決策をお届けすることに引き続き全力で取り組んでいきます」と述べています。
なお、今回の結果は、ヒューストンで開催された米国腎臓学会(ASN)「Kidney Week 2025」にて発表されました。
